研究実績の概要 |
パーキンソン病の姿勢異常の原因は多岐にわたる因子が挙げられるが、固有受容感覚の統合異常に着目し、パーキンソン病患者が主観的に垂直姿位として認識する姿位(主観的垂直位)が前屈姿勢の増悪に影響を及ぼすかを調査した。対象はパーキンソン病患者に対する1年間の前向き観察を行った。姿勢評価は起立直後の静止立位における体幹前屈(FFT)角度、体幹側屈(LFT)角度、被験者が主観的に垂直位と認識する位置での角度(主観的垂直姿位:SV角度)を初回観察時、半年後、12ケ月後に測定した。初回SV角度と6ヶ月後,12ケ月後のFFT角度との関係や、12ヶ月後のFFT角度に影響する因子を解析した。現在140例(平均年齢71.4歳,男性 64例、女性 76例,平均罹病期間67ヶ月、Hoehn-Yahr重症度 2.4、レボドパ投与量398mg/日、ドパミンアゴニスト服用率52%)の測定を行った。12ヶ月後まで観察できた101例の解析では、初回FFT角度 11.8±8.5度、初回LFT角度3.9±3.9度であり、観察期間中に有意な変化はなかったが、SV角度は半年後で2.3度の有意な悪化(P=0.002)がみられた。初回SV角度は、1年後FFT角度と有意に相関したが(r=0.68,P=0.001)、1年後LFT角度とは相関しなかった。階層的重回帰分析を用いて年齢、性別、ドパミンアゴニスト服用を調整した1年後FFT角度に影響を及ぼす因子として、初回SV角度(P=0.005)、半年後FFT角度(P=0.0001)が挙げられた。こられの結果からSVの評価はFFT角度進行の予後の予測に有用な可能性が示唆される。さらに、次年度には関節可動域や動作計測機器を用いた定量的評価手法を確立することにより、従来より汎用されている国際的パーキンソン病評価スケールとの一致性を検証し、姿勢保持困難に対する定量的評価の有用性を検証する。
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