研究課題
パーキンソン病(PD)に伴う姿勢異常の中でも、垂直姿勢保持困難の前屈姿勢は、嚥下障害や歩行障害、体位変換障害、視野制限による行動障害、胸部圧迫による肺活量低下などの身体機能のみならず、患者自身の容姿、自尊心に関するメンタルケアを含めたQOL低下に関わる重要な徴候である。しかしながら、薬物に抵抗性であることが多く、垂直姿勢保持困難の増悪を防ぐことが喫緊の課題である。研究代表者は、固有受容感覚の統合異常による主観的垂直位(SPV)の認識の不良が大きな原因であると考え、これまでに主観的垂直位の認識不良と垂直姿勢保持困難との関連を明らかにしてきた。本研究において、発症早期PD患者を対象に主観的垂直位の測定法を導入し、定量的評価を経て病期の進行度との関係を明らかにし、早期的な評価手法を確立させることした。さらに、リハビリ治療における姿勢異常の進行を予防するためのモデルケースを提案することとした。研究成果として、第一に1年間の観察前後でPD患者の歩行動作を測定し, Mobile Motion Visualizer(MMV)により得られた歩行中の頚部・腰部傾斜角度が臨床評価指標と関係するかを調査した。その結果、MMVを用いるとPD患者の体幹側傾など日常臨床で把握しづらい症候を定量的に評価することが可能であり, PD治療の効果判定において, MMVによる評価が有用である可能性を証明した。次に、PD患者自身が認識する垂直姿勢が静止立位における前屈角度の増悪に影響するかを前向きに検証するために、13施設により、多施設観察研究を行った。その結果SPVによる評価は、FFT進行の予測に有用な可能性を証明した。今後さらにSPVを用いた姿勢異常の悪化を防止したリハビリプログラムの開発が必要とされ、胸郭運動を含めた新たな解決策の構築が必要とされる。
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