研究課題/領域番号 |
21K11323
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研究機関 | 福井医療大学 |
研究代表者 |
酒井 涼 福井医療大学, 保健医療学部, 助教 (80771857)
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研究分担者 |
村田 航志 福井大学, 学術研究院医学系部門, 助教 (10631913)
深澤 有吾 福井大学, 学術研究院医学系部門, 教授 (60343745)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | 脳出血モデルラット / 運動麻痺 / 感覚障害 / 機能回復 / 神経活動操作 / 神経回路 |
研究実績の概要 |
2021年度は脳卒中モデルラットの機能評価と損傷組織の定量的評価を行い、機能回復に関与する脳領域について分析した。 血管壁を融解させるCollagenase typeⅣの脳内微量注入により、運動機能や感覚機能にかかわるニューロンの軸索が通過する内包を標的とした脳出血モデルラットを作製した。これらのモデル動物を用い、術後の感覚運動機能の回復過程を検証した。ペレットを掴む際の前肢の動きを分析するSingle pellet reaching task testと機械的触圧覚を評価するvon Frey testにより運動機能と感覚機能を定量的に観察し、機能障害の回復過程を検証した。術後2日目では全個体に重度の感覚運動機能障害を認めた。しかし、術後28日目の評価では個体間に機能回復の程度にばらつきがみられた。そこで、ヘマトキシリン・エオジン染色により脳領域毎に損傷量を定量解析し、機能回復との関連について分析した。その結果、脚内核(Entopeduncular nucleus:EP)の損傷程度と術後28日目の評価結果に相関関係を認め、EPの損傷の有無が機能回復に影響を及ぼしていることが示唆された。 EPはヒトの淡蒼球内節に相当し、運動の調整機能を有する大脳基底核の出力核である。EPが機能回復にどのように関与しているかを明らかにするため、当初予定していた大脳皮質運動野を標的とした神経活動操作実験の対象をEPを含めて検証することとした。現在、EPとその軸索の投射先である視床外側腹側核に対しアデノ随伴ウイルスベクターを注入し、Designer Receptors Exclusively Activated by Designer Drugs(DREADD)という神経活動操作技術を用いて、これらの領域を繋ぐニューロンの選択的な機能阻害が行動解析にどのような影響を及ぼすかを検証している。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当該年度は作出した動物モデルの各種機能評価と損傷組織の定量解析の結果から、機能回復に影響を及ぼす脳領域を分析した。その結果、EPの損傷の有無が機能回復に影響を及ぼすことを見出した。EPから視床外側腹側核に投射するニューロンが脳出血後の感覚運動機能の回復にどのように寄与しているかは、これまでの研究では明らかになっていない。そこで、EPを対象に神経活動操作実験を行い、脳出血後の機能回復過程におけるEPの重要性を神経回路学的視点から明らかにしていく。 脳出血後の機能回復の定量解析基盤を確立し、さらにDREADD実験も導入できており、当初の予定と概ね相違なく実験を進行している。
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今後の研究の推進方策 |
引き続き大脳皮質、EPのニューロンを対象に順次DREADDによる神経活動操作実験を進める。これらの神経活動操作実験により機能低下を生じさせるニューロン、そして機能回復に関与するニューロンを同定する。また、上記実験により同定されたニューロンへの神経活動操作実験が脳出血モデルラットの機能回復に影響を及ぼすかを今後検証していく。
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次年度使用額が生じた理由 |
薬理遺伝学的実験に使用するウイルスベクター関連の試薬が共同研究により安価もしくは無料で提供したもらえたため2021年度の使用額が減少した。2021年度の実験結果から、2022年度は実験対象の脳領域が追加されたため、ウイルスベクターを用いた実験を想定よりも多く行う予定となった。そのため、動物の購入費や染色に用いる抗体の購入費を当初の予定より増額する。
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