研究課題/領域番号 |
21K11327
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研究機関 | 神戸学院大学 |
研究代表者 |
松原 貴子 神戸学院大学, 総合リハビリテーション学部, 教授 (30294234)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | 疼痛 / ロコモ / サルコペニア / フレイル / 中枢性疼痛調節機能 / 体組成 / 筋量 |
研究実績の概要 |
ロコモティブシンドローム(ロコモ),サルコペニア,フレイルはいずれも筋量減少(量的変化)とともに筋力・筋機能低下(質的変化)をきたし,健康寿命の短縮及び要介護のリスクを高める。それら虚弱状態と疼痛は関係することが示唆されているが,それらの疼痛調節機能(疼痛感作や疼痛抑制能変調など)を解析した報告はない。本研究では定量的知覚検査(QST)を用いて疼痛調節機能を計測し,ロコモ・サルコペニア・フレイル度との関係性について年代・性別及び体組成にて層別化し解析を進めている。 令和4年度の対象者は,若年大学生に学外医療従事者を加え143名(男性81名[24.3±8.9歳],女性62名[25.0±9.1歳])となった。評価項目は対象者特性(年齢,性別,身長,体重,体格指数[BMI]),QSTにて中枢性疼痛調節機能(圧痛閾値[PPT],疼痛の時間的加重[TSP],条件刺激性疼痛調節[CPM]),生体電気インピーダンス法(BIA)にて体組成(筋量,四肢骨格筋指数,筋位相角,体脂肪率,体水分均衡)とした。解析はQSTと体組成の各指標との相関を性別で分析した。その結果,体組成とQSTの各項目の平均値は男女ともに健常域であり,男性は女性より身長,体重,BMI,PPT,骨格筋指数,筋位相角が有意に高値,体脂肪率,体水分均衡が低値を示した。さらに,全対象および男性のPPTと骨格筋指数に正の相関,PPTと体脂肪率に負の相関,男性のCPMと体脂肪率に負の相関を認めた。 以上より,疼痛調節機能の指標となるPPTやCPMは体組成の一部と関係性を認めたが,対象が若年者ですべての計測値が正常範囲内であることから弱い相関にとどまっている。令和5年度は幅広い年齢層と有痛者を増やし調査・分析を進める。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
初年度に引き続き,コロナ禍のため,さまざまな年齢層の地域住民のリクルートが難しく,臨床においても制約が続いていた。ただし,令和4年度については,対象者を学外医療従事者にも広げ,また大学生に対しても計測を加速させた結果,若年無痛者についての解析はほぼ終了した。
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今後の研究の推進方策 |
コロナ禍の行動制限は緩和されたとはいえ,臨床現場における感染対策と研究制約については解除には至っていないことから,中高年層の地域住民のリクルートを積極的に進め,さらに疼痛を有する地域住民および連携臨床研究機関の慢性疼痛患者を合わせデータ収集を加速させる予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
初年度に購入した体組成分析装置を用いて,筋量(量的評価)と筋質(質的変化)を中心に計測を進めてきたため,支出を抑え効率的な計測が行えた。それによる次年度経費にて,当初購入を計画していた超音波骨密度測定装置を加え,筋だけでなく骨コンディションも解析可能な計測デバイスを整える計画である。
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