ロコモティブシンドローム(ロコモ),サルコペニア,フレイルはいずれも筋量減少とともに筋力・筋機能低下をきたし,その脆弱状態が健康寿命の短縮及び要介護のリスクを高める。これらの虚弱状態は慢性疼痛と関係することが指摘されているが,慢性疼痛の病態基盤となる疼痛調節機能(神経感作や疼痛抑制機能の低下など)との関係を調査した報告はない。本研究では定量的知覚検査(quantitative sensory testing:QST)を用いて疼痛調節機能を定量化し,ロコモ・サルコペニア・フレイル度との関係性について年代,性別,体組成(BIA法)や骨密度DEXA法,超音波法),ならびに疼痛の有無にて層別化し解析を進めてきた。 令和5年度の対象者は慢性疼痛患者とした。評価項目は対象者特性(年齢,性別,BMI),体組成(体脂肪率,骨格筋指数[SMI]),骨密度(YAM値),疼痛調節機能としてQSTによる有痛・遠隔部の圧痛閾値(pressure pain threshold:PPT),時間的加重(temporal summation of pain:TSP),条件刺激性疼痛調節(conditioned pain modulation:CPM)とした。解析はBMI,体組成,YAM値とQSTの各指標との相関を調べた。対象は女性の変形性膝関節症(膝OA)患者16名(年齢 66.9±11.6歳,BMI 23.9±3.9)と女性の線維筋痛症(FM)患者25名(年齢 46.9±13.5歳,BMI 23.2±5.1)であった。膝OAではSMIが低いクラスターでCPMが低く,FMではBMIが高いクラスターで遠隔部のPPTが低かった。その他の項目で関係性は認めなかった。 以上より,慢性疼痛患者では骨格筋量の減少や肥満が疼痛調節機能の変調に関連する一方,骨密度は疼痛調節機能に直接関与しない可能性が伺えた。
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