研究課題/領域番号 |
21K11330
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研究機関 | 国立障害者リハビリテーションセンター(研究所) |
研究代表者 |
前川 貴郊 国立障害者リハビリテーションセンター(研究所), 研究所 運動機能系障害研究部, 研究員 (50782471)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | 力学的刺激 / 認知機能 |
研究実績の概要 |
本研究では頭部に受動的な力学的刺激を加え、脳内の細胞が力学的刺激に応答するのか調べ、認知機能に対する効果を調べている。運動が認知機能に効果を持つことが報告されており、運動の接地時に頭部に力学的刺激が加わることから力学的刺激の大きさと脳内細胞の応答の関係性を探索し、認知機能改善・向上に適切な運動強度や期間の確立を目指している。 2021年度は炎症モデルマウスを用いて認知機能に対する力学的刺激の効果を調べた。頭部に加える力学的刺激は中程度のトレッドミル走運動時に頭部に加わるのと同程度の大きさの力学的刺激を用いて短期(1週間)、長期(1~2か月)の介入を行った。炎症モデルは力学的刺激を加えた後にLPSを腹腔内注射することにより作成し、LPSを注射した24時間後に行動テストを行った。行動テストはY字迷路試験、強制水泳テスト、尾懸垂試験を用いた。長期の実験では行動テストでコントロール群と力学的刺激を加えた群で差がなかったが、短期の実験では一部(強制水泳テスト、尾懸垂試験)の行動テストで力学的刺激を加えた群では炎症によって低下した認知機能が回復した。また短期の実験で採取した脳(海馬、前頭前皮質)の炎症性サイトカインの遺伝子発現(TNF-α、IL-1β)を調べた結果、LPSによって増加する遺伝子発現が力学的刺激を加えた群ではコントロール群に比べ低かった。以上の結果から、短期の実験において認知機能に対して力学的刺激が効果を持つことを確認できた。今後は組織学的解析と網羅的遺伝子発現解析によって力学的刺激に応答する細胞種を特定する。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
長期の介入期間は数ヶ月かかってしまうことと行動テストは一日で計測できる匹数が限られているため当初予定していたデータ(n数)が集められていないが、短期での実験で認知機能に対する力学的刺激の効果が確認できたため。
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今後の研究の推進方策 |
今後は更にn数を追加することと、免疫染色により炎症性サイトカイン発現や活性(NF-κBアセチル化など)が力学的刺激によって変化する細胞種を同定する。また運動刺激により発現が増えるとされている神経新生に関連したタンパク質発現を評価する。
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次年度使用額が生じた理由 |
解析に時間を要したため、計画していた匹数のマウスを購入しなかったため、次年度使用額が生じた。2022年度分と合わせてマウスの購入と網羅的遺伝子発現解析に使用する予定である。
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