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2021 年度 実施状況報告書

ラット大脳皮質局所電場電位計測によるロボティックリハビリ効果促進メカニズムの解明

研究課題

研究課題/領域番号 21K11331
研究機関国立研究開発法人産業技術総合研究所

研究代表者

金子 秀和  国立研究開発法人産業技術総合研究所, 情報・人間工学領域, 主任研究員 (20356801)

研究期間 (年度) 2021-04-01 – 2024-03-31
キーワードリハビリテーション / 学習 / アシスト / フィードバック / 脳損傷
研究実績の概要

近年、ロボット技術を用いたリハビリテーション(以下、リハビリ)への期待が高まっている。しかし、ヒトでは障害の程度や訓練に対するモチベーションなどを一定にすることが困難であるため、その効果の検証は容易ではない。実験動物を用いれば、損傷部位を再現性良く作成することや提案する訓練法の効果のみを評価することが可能となる。本研究では、脳梗塞片麻痺および健常ラットに選択反応時間タスクを学習させる際、応答動作に同期して誤反応動作及び正反応動作を強制的に誘発し、その際に生じる大脳皮質電場電位に関連した脳活動が学習過程の促進及び遅延現象と関連していることを明らかにし、運動企図の生じるタイミングに対してどのように外力を加えることが有効であるのか、そのメカニズムを明らかにする。これによって、ロボット技術をリハビリ分野へ応用する際の新しいストラテジーを提示する。
健常ラットおよび片側大脳皮質脳梗塞ラットに左右一方の前肢への空圧刺激に対してレバー離しによって応答するという選択反応時間タスクを学習させ、大脳皮質局所電場電位を反映していると考えられる大脳皮質上硬膜外電位を計測した。硬膜外電位は約1.5mm間隔で硬膜表面に配置された32チャネル電極によって導出し、空間的ラプラシアンフィルタで信号処理した。その結果、空圧刺激の直後及びタスク応答動作の直前に陰性の事象関連電位を計測できた。また、これまでに応答時刻付近のタイミングでレバーを駆動してラット前肢に外力を加え、“誤”応答動作を強制的に誘発することにより、学習過程を促進させうることを実証しているが、駆動側レバー対側の大脳皮質前肢感覚運動野に陰性の事象関連電位の発生していることが分かった。このことから、タスク学習中にレバー駆動することによる介入が大脳皮質での脳活動を生じ、その脳活動が学習過程の促進に関わっていると示唆された。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

3: やや遅れている

理由

今年度は、健常ラットに選択反応時間タスクの逆転学習を行わせ、レバー駆動によって引き起こされる脳活動がタスク遂行関連脳領域の神経活動を賦活化させ得ることを明らかにすることが目標であった。しかし、実験動物を用いた学習実験であり、硬膜外電位計測用電極の形状を改善する必要もあったため、訓練期間の短い健常ラットを用いて十分にはデータを収集できなかった。次善の策として、健常ラットではなく、従前からよく訓練されていた片側大脳皮質脳損傷ラットに硬膜外電極を埋め込んで脳活動を計測することにした。その結果、レバー駆動によって対側大脳皮質前肢領域において陰性の硬膜外電位が観測できることが分かった。しかし、その結果は健常ラットとの比較を通して検討されるべきものと考えられるので、引き続き検討を要する。

今後の研究の推進方策

硬膜外電位計測を実施したラットにおいては硬膜外電極の位置、埋め込みに伴う神経組織学的な変化、脳梗塞ラットにおいては脳損傷部位の広がりを確認しなければならない。また、皮質間の事象関連電位の大きさやタイミングが試行ごとに異なっているが、その原因とタスクの成績との関係を明らかにし、エラーの発生過程や学習過程の進行状況のモニタリングが可能であるか検討しなければならない。したがって、前者については神経組織学的な解析を進める。また、後者については機械学習を用いた解析が有効である可能性があるので検討してゆきたい。

次年度使用額が生じた理由

本研究は実験動物を用いた学習実験を含んでいるので、思うようにデータが収集できていない部分がある。対照群としての健常ラットの実験結果が不足しているが、脳梗塞ラットを用いて実験上の課題は見えてきていることから、やや遅れて研究は進捗しているものと考えている。そのため、健常ラットを用いた実験に必要な消耗品等の購入の時期が遅れたため、次年度使用額が生じてしまった。その一方、硬膜外電極の配置やその埋め込みに伴う脳組織の変形状態を確認する必要が生じてきたため、脳組織解析及び硬膜外電極の改良のために本残額を使用する。

  • 研究成果

    (1件)

すべて 2022

すべて 学会発表 (1件)

  • [学会発表] 脳梗塞片麻痺ラットの感覚運動連合学習における強制的応答動作誘発の効果2022

    • 著者名/発表者名
      金子 秀和、鮎澤 光、太田 聡史
    • 学会等名
      STROKE 2022(第47回日本脳卒中学会学術集会、第51回日本脳卒中の外科学会学術集会、第38回スパズム・シンポジウム)

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公開日: 2022-12-28  

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