研究課題/領域番号 |
21K11338
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研究機関 | 仙台大学 |
研究代表者 |
渡邉 泰典 仙台大学, 体育学部, 准教授 (50638418)
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研究分担者 |
稲垣 良介 岐阜聖徳学園大学, 教育学部, 教授 (20583058)
森山 進一郎 東京学芸大学, 教育学部, 准教授 (60386307)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | 河川 / 着衣泳 / 体温低下 / 深部体温 / 選択的行動 |
研究実績の概要 |
水難時に着衣が果たす役割は,冷水に直接肌をさらすのを防いで,コールドショックレスポンスや体温低下を軽減することにあるとされるが,いずれもプールあるいは水槽などで検証された報告が数点確認できるのみで,自然水域でそれらを実証した報告は見当たらない.とりわけ,河川は山に降り積もった雪解け水や地下からの湧水が流れ込むことにより,海や湖よりも水温が低い傾向にあることはよく知られている. 本研究は,河川での水難を想定し,生存のための具体的な行動として「何もせずに救助を待つ」ことと「手足を動かして水中を移動する」ことを取り上げ,この2つの行動の違いが体温変化に及ぼす影響を検証することを目的とした. 調査は9月中旬,岐阜県長良川にて実施した.気温は30.0~35.6℃,WBGTは26.5~29.0℃,水温は19.8~20.8℃,水の流速は36.8~45.7㎝毎秒であった.13名の男子大学生を2群に分け,7名を「何もせずに救助を待つ群(DN)」,6名を「手足を動かして水中を移動する群(CA)」とした.衣服はTシャツとハーフパンツ(いずれも綿100%)とした.体温低下の程度を検証するため,ピル型センサを用いて消化器内温度を測定した. 検証の結果,最高温度は,DNが37.48±0.37℃,CAが37.43±0.33℃,最低温度は,DNが35.85±1.03℃,CAが36.01±1.51℃,平均温度は,DNが36.79±0.71℃,CAが36.74±0.97℃であった.また,活動開始時の温度は,DNが37.32±0.38℃,CAが37.10±0.52℃であり,活動終了時の温度は,DNが35.90±0.99℃,CAが36.39±1.53℃であった.いずれの項目においても統計学的有意差は認められなかった.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究課題は,自然水域における体温低下の検証という点にオリジナリティがあるため,調査実施が夏季に限られる.当該年度は当初計画通り,河川でのデータ収集に成功し,その概要は上に示した通りである.収集したデータについては,現在,詳細な解析を進めており,専門学会での研究発表及び論文化して研究成果として公表する予定である.以上の理由から,進捗状況の区分は「おおむね順調に進展している」と判断した.
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今後の研究の推進方策 |
本年度に検証した夏の衣服条件(Tシャツとハーフパンツ)のデータの更なる蓄積のため調査を実施する.加えて,発展的課題として,春や秋の衣服条件における検証を行う予定である.選択的行動についても,異なる条件を新たに設定・検証し,体温維持あるいは低下抑制のための具体的方策を検討する.
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次年度使用額が生じた理由 |
測定機器の購入費用が当初計画よりも安価ですんだことにより,物品費に次年度使用額が生じた.研究遂行にあたり,複数回の調査を予定していたが,天候等の条件が整わず調査回数が減少したことにより,旅費に次年度使用額が生じた.研究成果として国際誌へ投稿するために必要な英文校正や論文掲載料をその他として計上していたが,データ解析と論文執筆に時間を要したため,支出がなく,次年度使用額が生じた. これらについては,調査に必要な消耗品の購入のほか,調査と学会発表のための旅費とその参加費,国際誌へ投稿するための英文校正及び論文掲載料に充てる予定である,
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