研究課題/領域番号 |
21K11339
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研究機関 | 東洋大学 |
研究代表者 |
二橋 元紀 東洋大学, 健康スポーツ科学部, 准教授 (20738017)
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研究分担者 |
関口 浩文 山梨大学, 大学院総合研究部, 教授 (20392201)
伊藤 新 上武大学, ビジネス情報学部, 講師 (50581948)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2025-03-31
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キーワード | スポーツ外傷 / 中枢神経系評価指標 / 復帰判断基準 / 安全 |
研究実績の概要 |
本研究では、スポーツ傷害の回復過程における安全な復帰判断基準の策定を目指し、1) 神経生理学的評価、2) パフォーマンス評価、および3) 機能構造学的評価アプローチから評価を進めている。 神経生理学的評価:レクリエーショナルレベルの大学生アスリートを対象に、経頭蓋磁気刺激法を用いて皮質脊髄路興奮性に関わる皮質領域のマッピング評価を実施した。被検筋として、下腿部より前脛骨筋、大腿部より大腿直筋を選択し、各筋の応答領域がどのようになっているかを現在まとめている。 パフォーマンス評価:Zebris Medical GmbH社製のトレッドミルを用いて、開眼、閉眼片脚立位時の足圧重心を測定した。COPの総軌跡長、95% confidence ellipse areaを算出してバランス能力を評価している。また、同様のトレッドミルを使用し、歩行時(4km/h)、ジョギング時(8.0km/h)の足圧重心COPを評価している。併せて、各指標が皮質脊髄路の興奮性とどのように関連しているのかを検証中である。 機能構造学的評価:引き続き、大学生アスリートを対象に超音波画像装置により足関節靭帯の連続性(ストレス時の離開距離、変化率)、肥厚、骨棘等の形態構造を観察している。現在、靭帯の連続性を分類し、破断の有無・度合い(離開距離、変化率)、破断の場所、裂離骨片の有無がその後のシーズンにおける足関節捻挫発生に影響を及ぼしているかを検討している。引き続き、各指標の検証ならびに関連性を明らかにしていく。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
研究環境の変更もあり、倫理再審査の実施などに伴い2023年度の実験開始が後倒しとなり、研究遂行に予想以上の時間を要した。そのため、研究の進捗はやや遅れている。 現状で、2023年度はパフォーマンス評価にもつながる片脚立位バランス課題における足圧重心(COPの総軌跡長、95% confidence ellipse area)、歩行、ジョギング時における足圧重心(左右移動距離、中心軌跡)と大腿部、下腿部を支配する大脳皮質領域との関連性を健常群で検証してきた。一定の傾向を認めつつあるが、サンプルサイズがまだ小さいため、継続していく必要がある。一方で、従来予定であった足関節捻挫群における検証が遅れており、慢性的足関節不安定性に対する知見を明らかにしていく必要がある。 機能構造学的評価として、大学生アスリートに対する足関節周囲(足部含む)の超音波画像評価および動的バランス評価を引き続き進めてきた。その結果より、シーズン中の足関節捻挫発生有無との関連性を検証してきた。現在、一定のリスク要因を同定しつつあり、結果を学会発表、論文執筆につなげていくことが急務である。
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今後の研究の推進方策 |
神経生理学的アプローチとして、CAI群に対する立位課題における皮質脊髄路興奮性の変容を論文執筆につなげていく。現在実施中の片脚立位課題、歩行・走行課題における足圧中心COPと大腿部、下腿部を支配する大脳皮質領域との関連性を引き続き明らかにし、学会発表、論文執筆につなげていく。また、遅れている足関節捻挫群、慢性的足関節不安定性群を対象にした検証を実施していく。 パフォーマンス指標アプローチ(動的バランス評価、歩行・走行課題)、機能構造学的評価アプローチ(足関節部靭帯の連続性、骨変性等)に関して得てきた知見を学会発表ならびに論文執筆につなげていく。併せて、神経生理学的アプローチとの関連性を引き続き検証していく。一方で、ワットバイクによるペダリング課題を指標にした評価を進め、多角的な観点から神経生理学的アプローチとの関連性を検証していく。
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次年度使用額が生じた理由 |
2023年度で国内学会発表、海外発表を実施する予定であったが、研究の遅れにより海外発表に至らなかった。また、例年発表していた国内学会(日本体力医学会)も記念大会により個人発表がなく発表の機会を得られず、余剰金が生じた。また、論文執筆が遅れており、論文執筆に向けた英文校正費等の経費が減少した。 2024年度において、引き続き各指標を基にした検証を続けていくため、備品ならびに人件費・謝金に使用していくことを計画している。また、学会発表に向けた旅費、および論文執筆に向けた英文校正費、論文投稿費用に充てていく予定である。
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