研究課題/領域番号 |
21K11360
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研究機関 | 東京学芸大学 |
研究代表者 |
森山 進一郎 東京学芸大学, 教育学部, 准教授 (60386307)
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研究分担者 |
荻田 太 鹿屋体育大学, スポーツ生命科学系, 教授 (50224134) [辞退]
渡邉 泰典 仙台大学, 体育学部, 准教授 (50638418)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | 流体力学 / 水抵抗 / 推力 / 超最大速度 |
研究実績の概要 |
昨年度の成果として、人為的に水中で泳者を推進方向より牽引する被牽引泳(アシスト牽引泳)と牽引を用いない通常泳を比較した結果、アシスト泳の特徴として泳速、1かきで進む距離(ストローク長)と1かきあたりの所要時間(ストローク頻度)が通常泳よりも高まることが挙げられる。換言すると、泳者を外から見ることで評価することのできる指標は、牽引の有無で異なることが明らかとなった。しかしながら、アシスト牽引泳において泳者が水に対して加えることのできた力(推力)は、未だほとんど知見が見られない。とりわけ、牽引力を統制した一定条件下での推力の測定データは管見の限り皆無である。そこで、本年度は、手部で発揮している推力を可視化するために小型の手部推力測定用圧力センサ(Aquanex Analysis)を用いた実験を行った。 泳速の異なる2名の大学男子競泳選手(選手A:身長1.79m、体重74.2kg、全国大会出場レベル、選手B:身長1.69m, 体重63.4 kg、地区大会出場レベル)を対象に、通常泳および水泳用牽引装置による牽引力を10から40ポンドまで10ポンド刻みに設定した計5試行となる最大努力による25mクロールにおける泳速、ストローク長およびストローク長に加えて左右の手で発揮した推力を測定した。 主な結果として、手部推力について、選手Aにも選手Bにも左右差が確認され、その最低値は選手Aは40ポンド、選手Bでは30ポンドの牽引力条件下で確認された。また、牽引時の方が通常泳よりも手部発揮推力が低くなる傾向が散見された。そのため、泳者自身では達成しえない泳速で推進する状況では、泳者が手部で水を後方に押し出しても手部の絶対速度が身体の推進速度に相殺され、結果として推進力を高められないことが示唆された。なお、同様の方法にてさらに13名の競泳選手のデータ測定も完了したため、現在分析を進めている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
本年度は、競泳選手における被牽引泳(アシスト牽引泳)時の手部発揮推力を測定できることが確認できた。そのため、同様の方法にて、さらに競泳選手13名のデータ収集を完了でき、現時点で計15名分の競泳選手のデータ収集に成功した。この一部データについては、すでに学会にて発表することができ、議論を深めることもできた。 しかしながら、競泳選手以外(競泳経験のない一般学生)を対象としたデータ収集は、昨年度からあまり進んでいない。さらに、次年度に予定している一定期間のアシスト牽引泳トレーニングの効果の検証について、設定すべきアシスト牽引負荷についても未だ確定できておらず、議論を進めている最中である。 以上の理由より、進捗状況の区分は「やや遅れている」と判断した。
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今後の研究の推進方策 |
当初の計画に対して未だ着手できていない点である①未熟練者に対する被牽引泳(アシスト牽引泳)時のキネマティクス、キネマティクスおよび手部推力の測定を実施しつつ、②一定期間のアシスト牽引泳トレーニング効果の検証の2点を中心に取り組む。また、水泳に加えて、同じ動作を繰り返す循環運動である陸上競技の走運動も加味しつつ、実施者が自身の能力として発揮できる以上の速度を可能とするアシストトレーニングに関する昨今の知見をレビューとしてまとめ、超最大速度(オーバースピード)トレーニングに期待される効果を再検討しつつ、本申請課題をまとめたい。
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次年度使用額が生じた理由 |
当初予定では本年度に国際学会にて成果発表を行う予定だったが、昨今のコロナウィルスの状況を鑑みて、海外での学会発表は見送ることとした。そのため、当初予算よりも差額が生じる形となった。この生じた差額は、オープンアクセス化された国際学術雑誌への成果報告や、本申請課題に共に取り組んでいる海外の研究者の所属機関を訪問して国際共同実験を行う際に使用する計画である。
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