研究課題/領域番号 |
21K11362
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研究機関 | 京都産業大学 |
研究代表者 |
松永 智 京都産業大学, 現代社会学部, 教授 (70221588)
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研究分担者 |
和田 正信 広島大学, 人間社会科学研究科(総), 教授 (80220961)
松永 須美子 池坊短期大学, 幼児保育学科, 准教授(移行) (70553436)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | 一酸化窒素供与体 / 伸張性収縮 / 筋機能 / 疲労回復 |
研究実績の概要 |
「伸張性収縮後の一酸化窒素供与体の経口摂取が筋機能低下の回復を促進する」、引き続き「伸張性収縮の前後の継続的な一酸化窒素供与体の摂取が筋機能低下を緩和し、その回復をも促進する」という仮説の下、伸張性収縮後の筋発揮張力と筋小胞体Ca2+取込・放出機能変化に着目し、検証を行った。そして、伸張性収縮運動に起因する筋機能の維持、及び機能が減退した場合の回復促進策の解明のため、一酸化窒素供与体摂取の適切な時期や期間を検討した。 9週齢の雄性ラット24匹を、伸張性収縮を200回負荷する群と対照群に分け、さらにECC群を水溶化させたS‐ニトロソグルタチオンを1、あるいは3日間経口摂取(1 mg/kg/day)する群と非摂取群に細分化した。ラット前脛骨筋の筋収縮力は小動物トルク測定器を用い、皮膚表面から電気刺激を行い測定した(1~100Hz)。この測定は、伸張性収縮の前後、及び1,あるいは3日間の一酸化窒素供与体摂取後とした。その後、筋収縮終了1、あるいは3日後に前脛骨筋を摘出し分析に供した。摘出した前脛骨筋は酵素活性測定用とタンパク質解析用に分割し測定までの間、-80℃冷凍庫にて保管した。伸張性収縮負荷により筋収縮力(1~100Hz)は明らかに減少した((0~100Hzにおける主効果 : P<0.05)。一酸化窒素供与体摂取により筋収縮力は回復し、その回復の程度は、一酸化窒素供与体摂取1日間より3日間の方が顕著に大きかった(0~100Hzにおける主効果: P<0.05)。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
伸長性収縮後に一定期間経口摂取させた一酸化窒素供給体が、筋収縮力および細胞内Ca2+制御能力の機能の低下抑制に関与するか否かについて検討を行った。9週齢の雄性ラットを伸張性収縮後1、あるいは3日間、水溶化させたS‐ニトロソグルタチオンを経口摂取させた。なお伸張性収縮は200回負荷とし、被検筋は前脛骨筋とした。本年度は、前脛骨筋の筋収縮力の測定は行なえたが、摘出された前脛骨筋の筋小胞体Ca2+-ATPase活性の測定と細胞内Ca2+制御に関与するタンパク質の量的分析は行えなかった。これは、麻酔下による体温管理の難しさの克服に時間を要したことによる実験計画の遅延に起因する。
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今後の研究の推進方策 |
「伸張性収縮後の一酸化窒素(NO)供与体の経口摂取が筋機能低下の回復を促進する」、引き続き「伸張性収縮の前後の継続的なNO供与体の摂取が筋機能低下を緩和し、その回復をも促進する」という仮説の下、伸張性収縮後の筋発揮張力と筋小胞体Ca2+取込・放出機能変化に着目し、検証を行う。そして、運動に起因する筋機能の維持、及び機能が減退した場合の回復促進策の解明のため、NO供与体摂取の適切な時期や期間を検討する。 (1) 筋小胞体(SR)の機能の測定 (松永智: 研究代表者, 松永須: 研究分担者)。筋を抽出液とともに均一化し、筋サンプルを得る。SRCa2+-ATPase活性、及びCa2+取込・放出速度を測定する (Matsunaga et al. 2015)。 (2) Ca2+濃度調節タンパク質の解析 (松永智: 研究代表者, 松永須: 研究分担者)。泳動用サンプル量を算出するために筋サンプルのタンパク量を測定する。その後、電気泳動、免疫ブロッティングを行い、以下の項目について量的解析とタンパク質修飾に関する質的解析を行う。抗体関係をはじめとした薬品類は購入予定である。①量的解析は、SR Ca2+-ATPase, リアノジン受容体、 ジヒドロピリジン受容体、ジャンクトフィリンについて、②質的解析は、前述のタンパク質の修飾の有無について解析を行う。 その後、9週齢の雄性ラット24匹を伸張性収縮後5、7日間のNO供与体摂取群、及び無摂取群に分け、NO供与体の摂取はS-ニトロソチオールを水に溶解させ飲水摂取させる第2実験を行う。これ以降の実験方法は、2021年度に行った伸張性収縮後1、3日間のNO供与体摂取の第1実験を同様とする。
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次年度使用額が生じた理由 |
研究代表者の勤務先異動に伴い、新たな研究環境となり、この一年間は、その実験施設・環境の整備に時間を要した。また薬品管理のための学内基準をクリアすることができず、試薬の購入が出来ず、摘出した筋サンプルを用いた、筋小胞体機能の測定を行うことができなかったが、その目途が立った。そのため、本年度余剰金は主として基礎薬品をはじめとした実験用試薬の購入に充てたいと考えている。
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