本研究は、従来注目されてこなかった、幕末~明治初期の訪日外国人の見聞録を史料として、近世日本のスポーツの実際を明らかにすることを目的に行われた。 最終年度にあたる2023年度は、幕末期のペリー来航時に行われた江戸の力士たちによる相撲実演について、ペリー艦隊側が記した見聞録と日本側に残された史料の比較検討を行った。ペリー艦隊の公式遠征記録として”Narrative of the expedition of an American squadron to the China Seas and Japan:Performed in the years 1852・1853 and 1854”、ウィリアムズの随行日記として”A journal of the Perry expedition to Japan (1853-1854)”を用いた。史料の分析および比較検討の結果、ペリー来航とは、日米双方の者同士が、スポーツを通じて異文化を認知する重要な機会を提供するもであったことが明らかになった。これまでの3年間におよぶ研究により、訪日外国人の見聞録は、彼らがみた実体験に基づく客観的な情報が高い精度で記録され、近世の日本人が生き生きとスポーツを楽しむ姿を今日に伝える価値ある史料群であることが確認できた。 また、本研究によって、近代化以前の日本人のスポーツ活動の一端が明らかになり、今日に連なる日本的なスポーツの原風景を多少なりとも浮かび上がらせることができたと考える。
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