持久的トレーニング(TR)と低酸素暴露を同時や連続的に実施すると酸素供給能力やミトコンドリア生合成の変化が抑制される。両刺激因子の併用によるこのような変化を生じさせないためには、各因子による刺激を充分な時間間隔を空けてそれぞれ実施すれば、併用しても各刺激因子を単独で用いた際の適応が維持されるかもしれない。そこで本研究では、被験動物をコントロール群(Con群)、1日おきに低酸素暴露(12%O2で3時間)を実施する群(Hyp群)、1日おきに1日2回持久的TRを実施する群(Tr群)、低酸素暴露と持久的TRを交互に実施する群(Hyp+Tr群)に分類し、持久的TRと低酸素暴露の交互での刺激が筋有酸素性代謝能力に及ぼす影響を検証した。Hyp+Tr群においては、3時間低酸素暴露後の低酸素応答は筋組織においては顕著には生じず、腎臓においても低酸素暴露6時間後には安静時状態と同じ状態にまで戻ることを踏まえて、それぞれの刺激を交互に行う時間間隔はおおよそ24時間とした。各TR期間終了後に解剖を実施し、血液成分(ヘモグロビン(Hb)、赤血球)やミトコンドリア関連タンパク質、ミオグロビン(Mb)のタンパク質発現量を測定した。 その結果として、Hyp群でのHb濃度がCon群のそれと比較して有意に増加した以外には、持久的TRと3時間低酸素暴露刺激を充分な時間間隔を空けて交互に実施するTR方法であっても、想定したような適応はもたらされなかった。今後もそれぞれの刺激方法が抑制効果を受けないような低酸素環境と持久的TRの組み合わせ方をこれまでとは異なった観点から検討していく必要があると言える。
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