研究課題/領域番号 |
21K11384
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研究機関 | 静岡県立大学短期大学部 |
研究代表者 |
林 恵嗣 静岡県立大学短期大学部, 短期大学部, 教授 (00431677)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | 局所冷却 / 下肢冷却 / 高濃度炭酸泉 |
研究実績の概要 |
令和4年度は、局所冷却によってどの程度の冷却効果が期待できるかを検討した。令和5年度現在も測定を継続していることから、ここでは令和4年度実績について記載する。 被験者は健康な男性7名であり、冷却部位は下半身とした。椅坐位で安静を保ったのち、40℃に設定した水道水に15分間、肩まで浸かり体温を上昇させた。その後、25℃に設定した水道水もしくは炭酸泉へ移動して下半身の冷却を行った。炭酸泉の濃度は1300 ppmに設定した。水道水もしくは炭酸泉への浸漬については、順番をランダムにして行い、被験者は両条件での測定に参加した。下半身の冷却は、体温が加温前のレベルに戻るか、体温低下が起こらなくなるまで行った。測定項目は、舌下温、皮膚温(胸部、上腕部、大腿部、下腿部)、心拍数、大腿部皮膚血流量、温熱感覚、快適感覚、冷却時間であった。皮膚血流量はレーザー血流計を用いて測定し、安静時の値を100%とした相対値で評価した。冷却効果については、冷却時間および冷却速度から評価した。 40℃の水道水への浸漬によって舌下温は1.2℃上昇した。その後の冷却によって舌下温は低下したが、水道水条件においては7名中2名で体温が低下し切らず、加温前よりも0.4℃ほど高いままであった。冷却時間は水道水条件で11.9±4.1分、炭酸泉条件で10.9±3.1分であった。条件間に有意差は見られなかったが7名中5名で炭酸泉条件の方が短かった。また、冷却速度は水道水条件で-0.11±0.05℃/分、炭酸泉条件で-0.13±0.06℃/分であった。こちらも条件間に有意差は見られなかったが、7名中5名で炭酸泉条件の方が冷却速度は大きくなった。 以上のように、炭酸泉条件において冷却速度が高まる傾向がみられている。今後、残りのデータを解析し、最終的に炭酸泉による下肢冷却が水道水冷却よりも効果的であるかどうかを検討する。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
学生部長に任命されたことで学内業務量が激増し、研究活動の時間確保が難しくなったことが進捗状況の遅れの最大の原因である。また、測定についても日程調整に時間がかかったことで、年度内で完結させることができなかった。しかし、研究協力者の確保および測定日程に関しては目途が立っており、測定が終了次第、次の測定の準備へ移行する予定である。
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今後の研究の推進方策 |
これまでの測定から、水温を低下させすぎると炭酸泉による皮膚血管拡張作用が期待できなくなることが明らかとなっていることから、当初の計画を変更しながら研究を推進しているところである。先述した通り、水温が低すぎると炭酸泉による皮膚血管拡張作用が期待できないが、暑熱下での運動によって皮膚温は上昇しており、この状態からの冷却であれば、皮膚温が大幅に低下し炭酸泉による皮膚血管拡張作用が低下してしまうまでの間は、水道水よりも効果的に冷却することができると考えられる。2023年度は、皮膚温をあらかじめ変化させた状態で低温の炭酸泉に浸漬させた場合にどこまで冷却効果を高めることができるかを検討する予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
投稿論文をオープンアクセス化するための経費としていたが、年度内に投稿論文が受理されなかったことから、大幅な次年度への繰り越しが発生した。当該論文のオープンアクセス化のための経費および英文校正の経費として使用する予定である。
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