研究実績の概要 |
サッカー日本代表戦、計8試合の観戦者を対象に、性と年齢に基づく層化抽出法を用いた質問紙調査を実施した。実施したスタジアムは、東京、大阪(桜)、豊田、大阪(吹田)、仙台、北九州、新潟、神戸であり、配付数は3,365票、回収数は3,342票(回収率、99.3%)であった。 ファン・コミュニティ・アイデンティフィケーション(以下、FCIDと略す)を測定し、FCIDがファンの観戦行動に与える影響を、ホーム観戦頻度、アウェイ観戦頻度、同行者の規模、スタジアム滞留時間、向社会的活動、ファン・エンゲージメントなどとの関係を分析した。さらに、ファン・コミュニティの経営課題への機能を、シーズンチケットやライセンスグッズの購入行動、飲食物の購入行動、有料ネット放送(DAZN等)の契約状況、商圏サイズ、チームID、再観戦意向、推奨意向、SNSの利用状況との関係を分析した。 分析の結果、FCIDの程度は観戦行動に関する多くの変数で有意な関係があること、さらにFCIDの程度は経営課題に関する多くの変数で有意な関係があることが明らかになった。共分散構造分析の結果では、FCIDは、チーム・アイデンティフィケーションの先行要因となっていたことが確認された。これはJリーグ観戦者において指摘された関係(仲澤・吉田, 2015)と同様の結果であったが、サッカー日本代表戦観戦者におけるFCIDの程度は、相対的に低い傾向がみられており、その傾向は開催頻度が低いことが影響していると考察された。観戦頻度の低いイベントでは、FCIDを活用する際には、SNSなどヴァーチャルなつながりへの配慮がより必要となる可能性があると考察された。これは、サッカー日本代表戦を主管する日本サッカー協会の実務者対象ヒアリングの結果(仲澤, 2022)と軌を一にするものと考えられる。
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