研究実績の概要 |
異なる濃度(20.8%、30%及び100%酸素)の短期的な酸素刺激に対する脳内の記憶関連因子(BDNF、IGF-I)とアポトーシス関連因子(Bax, Bcl-2, OGG1)の遺伝子発現の変化及び記憶能に対する効果について検討した。 8週齢のICRマウス(雄)を用いて、20.8%酸素(通常空気濃度;コントロール)、30%酸素または100%酸素を21x21x19cmのアクリルチャンバー内に5L/minの流量で灌流させ、刺激を行った。これを30分/日、学習・記憶テスト(モリス水迷路による学習・記憶テスト)の 30 分前に 30 分間行った。この学習 4 試行/日、4 日間実施した。学習の48時間後、記憶テストを行い、終了後30分以内にそれぞれ脳を摘出し、皮質、海馬を分画し-80℃で保存した。得られた海馬と皮質組織からTotal RNAを抽出し、RT-qPCRを行い、BDNF、IGF-I mRNAの相対的発現量を定量化した。 今回、高酸素刺激に対する初期段階の応答を調べたが、モリスの水迷路実験からは 100%の 酸素刺激をすると記憶能力が向上する結果が得られた。しかし記憶関連遺伝子である BDNF や IGF- 1、OGG1 は記憶が向上するような結果は出なかった。酸素刺激に対する遺伝子発現の応答性、他の 記憶関連遺伝子の影響などが考えられるため更なる調査が必要である。アポトーシスの抑制は記憶 能力向上に関連する傾向が見られた。関連は見えたが酸素刺激が本当に関与しているのか、アポトー シス抑制が記憶能力を向上させるメカニズムはまだ推測段階であるので、活性酸素レベルの測定や 活性酸素を産生させないような条件などでの実験が必要と考えられる。
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