研究課題/領域番号 |
21K11391
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研究機関 | 熊本大学 |
研究代表者 |
大石 康晴 熊本大学, 大学院教育学研究科, 教授 (10203704)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | ウィスターラット / ヒラメ筋 / 足底筋 / Hsp72 / ERK1/2マップキナーゼ / p38マップキナーゼ / トレーニング / 筋線維組成 |
研究実績の概要 |
2022年度は、Wistar系雄ラット26匹をコントロールControl群、スプリント走Sprint群、持久走Endurance群の3つのグループに分け、トレッドミルを用いたランニングトレーニングを実施し、走行距離、速度、時間の3つの要因がヒラメ筋soleusと足底筋plantarisの筋線維組成とタンパク質発現にもたらす影響について検討した。 各トレーニングは小型動物用トレッドミルを走行する方法を用い、トレッドミルの傾斜角度は常に10度に設定し、週5日の頻度で5週間にわたりスプリント走・持久走トレーニングをラットに負荷した。トレーニング群のランニング速度は漸増法を用い、Sprint群は3分間のスプリント走をセット間に約1分の休憩を入れながら20セット行い、ランニングスピードは毎分10mから45mまで増加した。Endurance群では60分間1セットの持久走を負荷し、ランニング速度は毎分10mから29mまで増加した。 ヒラメ筋と足底筋の筋線維組成については、両トレーニング群共に、有意な変化は認められなかった。 ストレスタンパク質として知られる Heat shock protein (Hsp)72タンパク質発現はヒラメ筋ではスプリント走群において、また足底筋ではスプリント走群、持久走群ともに有意な増加が認められた。さらに、ヒラメ筋のマップキナーゼ ERK1/2タンパク質発現量には変化は認められなかったが、リン酸化p38マップキナーゼタンパク質は、スプリント走により有意な増加が認められた。足底筋のマップキナーゼタンパク質発現については現在分析中である。 本研究は、トレーニングにより下肢骨格筋に収縮・酸化ストレスが増加し、細胞内の種々のタンパク質発現に変化がもたらされる上で、マップキナーゼファミリーがどのように筋線維の適応変化に寄与するかを研究する上で、非常に興味深い結果である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
スポーツ生理学的観点から、運動・スポーツによる骨格筋の適応と筋細胞(線維)内部の変化を分析することは重要な課題である。 本研究では、スプリント走と持久走によるマップキナーゼタンパク質の発現変化を検討し、p38マップキナーゼタンパク質の有意な発現量増加が筋線維内部の適応変化に貢献する可能性を示唆する点において非常に意義のある研究成果と言える。
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今後の研究の推進方策 |
これまでの研究報告から、p38マップキナーゼタンパク質は種々のストレスにより発現量が増加する可能性が示唆されており、本研究結果でも顕著な変化が認められた。 2023年度は、さらに骨格筋に対して様々な角度から負荷刺激を増加、あるいは減少させた際の骨格筋線維内部のマップキナーゼタンパク質、ならびに関連タンパク質の発現変化について詳細な分析を行っていく予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
本年度の物品費使用額は911,282円であり研究を遂行する上で充分であった。余剰金は2023年度の研究費として使用する。
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