研究課題/領域番号 |
21K11397
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研究機関 | 順天堂大学 |
研究代表者 |
馬場 猛 順天堂大学, 医学部, 先任准教授 (80366450)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | 翻訳後修飾 / 2型糖尿病 / インスリン / シグナル伝達 |
研究実績の概要 |
血糖値制御の破綻による糖尿病発症は、脳卒中や心臓病などの病態を誘発する要因であり、血糖値制御機構を解明することが重要だと考えられる。これまで血糖値制御に関して、ラット心筋由来のH9c2細胞株においてインスリン刺激時に、解糖系酵素GAPDHがニトロ化修飾の引き金によるリン酸化に伴い酵素活性が亢進することを明らかにしてきた。またGAPDHのニトロ化修飾のレベルはインスリン刺激後数分をピークに減少していく。この速やかなニトロ化・脱ニトロ化の知見により、ニトロ化修飾のシグナル伝達への関与、さらにニトロ化・脱ニトロ化酵素の存在が示唆されるものと考え、心筋細胞株によるGAPDH変異体発現解析系を用いて、ニトロ化・脱ニトロ化に関与する分子の探索を行うことを目的とした。これまでに質量分析法によって決定したGAPDHのニトロ化修飾を受けるトリプトファンをフェニルアラニンに置換した、FLAG-変異型GAPDH、およびFLAG-野生型GAPDHを発現するプラスミドを構築、さらにその発現細胞株を樹立した。樹立した細胞株にインスリン刺激し、各細胞溶解液に対して、抗FLAG抗体を用いた免疫沈降後、電気泳動を行ったが、抗FLAG抗体による免疫沈降では沈降するGAPDHのタンパク量が少なく、野生型GAPDHあるいは変異型GAPDHと結合する分子に顕著な差異は見られなかった。構築した発現プラスミドにはGAPDHの細胞内局在を可視化するためEGFPも融合させており、これによって抗EGFP抗体による免疫沈降も可能であったことから、各細胞溶解液に対して、抗EGFP抗体を用いた免疫沈降後、電気泳動を行ったところ、野生型GAPDHに結合し変異型GAPDHに結合しない、いくつかの分子を検出することができた。これら分子の詳しい検討によりニトロ化修飾のシグナル伝達の仕組みが明らかになることが期待される。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
GAPDHのニトロ化・脱ニトロ化に関与する分子の探索を行うために樹立した、GAPDHのトリプトファンをフェニルアラニンに置換したFLAG-変異型GAPDH細胞株、およびFLAG-野生型GAPDH細胞株に対して、当初計画通り抗FLAG抗体を用いて免疫沈降を実施したが、良好な結果を得ることができなかったため、抗EGFP抗体を用いた免疫沈降に計画を変更し実施したため予定よりやや遅れているものと思われる。
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今後の研究の推進方策 |
2021年度では野生型GAPDHに結合し変異型GAPDHに結合しない、いくつかの分子を検出することができたので野生型GAPDHにのみ会合する分子をプロテオーム解析により同定する。同定した野生型GAPDHにのみ会合する分子(標的タンパク質)をRNA干渉(RNA interference: RNAi)により遺伝子発現を抑制し、GAPDHのニトロ化修飾への影響を検討する。標的タンパク質の発現抑制によって、インスリン刺激によるGAPDHのニトロ化が抑制されれば、標的タンパク質が脱ニトロ化酵素である可能性を示唆することができる。また、標的タンパク質に対する抗体による免疫沈降法を用いてインスリン刺激におけるGAPDHの下流に位置するインスリンシグナルカスケードの詳細を検討する。
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