骨格筋のミトコンドリアは運動負荷や除負荷に応じて量的・構造的に適応する細胞内小器官である。近年、骨格筋のミトコンドリアは骨格筋の量や機能に関連していることが報告されている。サルコペニアとミトコンドリアの関係についても議論が続いているが、加齢に伴いミトコンドリア構造がどのように変化するかこ れまで観察されていなかった。本研究は、加齢による骨格筋ミトコンドリア構造の変化を光学顕微鏡システムで捉えることが目的である。 2023年度は骨格筋内におけるミトコンドリアダイナミクス関連タンパク質発現について、加齢による影響があるか明らかとするため研究をおこなった。3ヶ月齢(Young)と24ヶ月齢(Aged)のC57BL6/Jマウス(オス、n=7)から腓腹筋を摘出した。クライオスタットを用いて切片(10 µm)を作成し、蛍光免疫組織染色法によりmfn2、fis1の染色をおこなった。YoungとAgedを比較したところ、細胞内の両タンパク質の発現について差は認められなかった。 また、ウェスタンブロッティングによりミトコンドリアダイナミクス関連タンパク質の発現量について解析をおこなった。その結果、ミトコンドリア融合に関わるopa1、mfn2はYoungと比較して、Agedが有意に発現量が高かった。また、ミトコンドリア分裂に関わるfis1もYoungと比較して、Agedが有意に発現量が高かった。 これらの結果より、加齢により骨格筋のミトコンドリアダイナミクスが活発に起きているが、ミトコンドリアの構造に大きな変化は起きていないことが示唆された。
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