研究課題/領域番号 |
21K11424
|
研究機関 | 東海大学 |
研究代表者 |
吉岡 尚美 東海大学, 体育学部, 教授 (60372950)
|
研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2025-03-31
|
キーワード | 発達障害 / スポーツ参加 / 障壁 / 阻害要因 |
研究実績の概要 |
本研究は、発達障害児・者が地域でスポーツに参加しようとする時に存在する障壁の具体的な事例と対応を、当事者とその家族の視点からより深く明らかにすることを目的としています。 2021年度は、発達障害児・者のスポーツ参加時における障壁に関する先行研究を整理することを目標としました。文献レビューの手続き(大木,2019)に則り、系統的にデータベースを用いて先行文献を検索、選択基準に基づいて文献を収集、分別、内容の検討を進めました。 今年度の成果として、文部科学省及びスポーツ庁より2013年度から2020年度に公表された「障害者のスポーツ参加促進に関する調査研究」の「障害児・者のスポーツライフに関する調査」報告書(文部科学省,2014;笹川スポーツ財団,2016,2018;株式会社リベルタス・コンサルティング,2020,2021)から発達障害のデータを抽出、経年的に整理し、現状と傾向を把握するとともに、発達障害児・者のスポーツ参加を促進するために必要な環境調整を導出しました。結果として、発達障害児・者の1年間のスポーツ・レクリエーション実施は、①週に1日以上定期的に実施できている割合は決して高くなく、成人で低い傾向が続いている、②個人で行える活動が多い、③「健康の維持・増進のため」に実施するする割合が高く、他者との交流機会や楽しむことを目的とする割合が低い、④スポーツ・レクリエーションに関心がない割合が高い傾向が続き、金銭的な余裕がないことが障壁として強く存在することが明らかになりました。このことから、発達障害児・者のスポーツ・レクリエーション参加を妨げる要因については、活動の中だけではなく、社会構造の中にも存在することを認識する必要があります。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
2021年度の目標のひとつであった、「障害児・者のスポーツライフに関する調査」報告書のデータを経年的に分析し、先行文献レビューの一部の成果として公表することは達成しましたが、系統的検索から先行研究を網羅的にレビューした内容について、成果発表まで至ることができなかったため、「やや遅れている」と自己評価しました。
|
今後の研究の推進方策 |
2022年度は、次の2つを目標にして研究を進めます。 ①2021年度に取り組んだ包括的文献レビューを論文にして成果発表する。 ②発達障害がある当事者、および保護者を対象にしたインタビュー調査を実施する。 ①については、内容検討から質的な文献統合を行い、論文を執筆します。論文投稿先として、東海大学体育学部紀要、発達障害研究、アダプテッド・スポーツ科学のいずれかを考えています。 ②については、4月に東海大学「人を対象とする研究倫理委員会」に申請し、5~6月に承認が得られるように進めます。承認後、対象者の選択、依頼、インタビュー調査の実施を年度内で進めます。 2023~2024年度は、インタビュー調査結果をケーススタディーとして分析し、それぞれの結果について成果を学会および論文で発表します。最終年度である2024年度末には、各ケーススタディーにおいて明らかになった障壁と対応のプロセスの共通点と相違点を整理し、事例を集成します。
|
次年度使用額が生じた理由 |
次年度使用額が生じた理由 参加を予定していた学会がすべてオンライン開催となり、参加費の減額があったとともに、旅費の使用がありませんでした。また、新型コロナウイルス感染拡大の影響により、研究補助職員の雇用ができず、人件費・謝金の使用がありませんでした。 次年度使用計画 研究の促進を図るため、2022年5月より研究補助職員を雇用します。また、関連学会が対面で開催される予定のため、参加費ならびに旅費の使用が発生する予定です。さらに、2022年度はインタビュー調査を実施するため、対象者への謝金が発生する予定です。
|