研究課題/領域番号 |
21K11431
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研究機関 | 京都産業大学 |
研究代表者 |
浜田 雄介 京都産業大学, 現代社会学部, 准教授 (30612626)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | アスリートキャリア / 市民スポーツ / 地域スポーツ |
研究実績の概要 |
2021年度の研究実績について、まず以前にトライアスロン選手および競技関係者を対象に実施した調査の結果を、論文「〈第3のアスリート〉のキャリア形成における選択の合理性:あるトライアスロン選手のライフストーリーから」としてまとめた。そのなかで、アスリートキャリア研究におけるアスリート本人の「納得」の水準の重要性や、国内のトライアスロン選手たちに対する「ローカル」な貢献への期待・評価の存在が示されたことは、本研究における新たなアスリートキャリアモデルの構築に資する重要な成果だと考えられる。なお上記論文は、『年報体育社会学』4巻への掲載が決定している。 また西日本スポーツ社会学会第27回大会(2022年3月)において、「東京2020大会とスポーツの力」と題した報告を行った。この報告で取り上げた東京オリンピック・パラリンピック(東京2020大会)に対する批判的言説にもとづけば、資本の論理や勝利至上主義に取り巻かれたアスリートは表層的なスポーツの理念しか語ることができず、端的には社会と分断された状態で競技している。このような現状認識は、本研究がアスリートと市民スポーツ/地域スポーツのつながりに着目することの意義を考えるうえで示唆的だった。 そのほか、NTT 社会情報研究所による「アイデンティティをめぐる対話企画」に参加し、NPO法人ドネルモ代表理事の山内泰氏、NTT社会情報研究所主幹研究員の西川嘉樹氏、同研究主任の林瑞恵氏と、アイデンティティ概念に関する意見交換を行った。得られた成果の例として、ある活動を介して交換可能な役割などとは異なるその人自身の固有性(「わたし」)が現れ、またそれぞれの「わたし」が受け入れられるという観点は、アスリートと彼ら/彼女らを支える周囲との関係の理解に向けて非常に参考になった。本企画の内容は今後テキスト化され、ウェブ上で公開される予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
4: 遅れている
理由
当初の計画では、2021年度はインタビュー対象候補者のトライアスロン選手が出場する大会、指導を行う教室や参加するイベントなどにおける現地調査に赴くはずだった。しかしながら、新型コロナウイルスの影響で大会やイベントが中止・延期になったこと、また長距離の移動や調査地での人々との直接的な接触を自粛せざるを得なかったことから、上記の調査を実施できなかった。こうした事情から、インタビュー対象候補者の経歴や近年の状況に関する情報収集などは進められているものの、本研究の進捗状況を「遅れている」と評価した。
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今後の研究の推進方策 |
2022年度は、トライアスロン選手を対象としたインタビュー調査を行う予定である。すでに対象者の選定は進んでおり、一部協力ないし紹介の内諾を得ている。また2022年にインタビュー調査と並行して、あるいは2023年度の研究計画に設けている補足調査期間中に、2021年度において断念した現地調査を可能な範囲で実施したいと考えている。ただし新型コロナウイルスの影響によって、研究計画や方法の見直しを迫られることも想定される。したがって今後も状況を注視し、例えば調査が行えなくなった場合にどのようにして研究を遂行するのかといったことを検討していかなければならない。
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次年度使用額が生じた理由 |
「現在までの進捗状況」で説明したとおり、新型コロナウイルスの影響によって2021年度に予定していた調査を実施できず、関係する「旅費」や「物品費」が執行されなかった。これらの経費については、主に「今後の研究の推進方策」に記した2022年度以降の調査のために使用する予定である。
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