本研究は腸内環境も運動トレーニングに対する可塑性を有するという仮説を設定し、運動トレーニング期間とディトレーニング期間からなる実験プロトコルから、腸内細菌叢と代謝産物の相互作用、更に体組成への影響を検討した。実験参加者は健常女性20名。8週間のレジスタンストレーニングと8週間のディトレーニングを実施した。レジスタンストレーニングは胸部、背筋、肩、上腕二頭筋、上腕三頭筋、腹筋、大腿四頭筋、大腿二頭筋をターゲットに週4回の頻度で実施した。腸内環境を評価するためにトレーニング開始前、トレーニング開始4週間後、8週間後、ディトレーニング4週間後、8週間後のポイントで便サンプルを採取し腸内細菌叢及び代謝産物を評価した。8週間のレジスタンストレーニングにより除脂肪体重や骨格筋量は有意に増加し、続く8週間のディトレーニングで有意な低下を示した。また、脚筋力は8週間のレジスタンストレーニングで有意な増加を示し、その後のディトレーニング期間でも有意な増加は維持されていた。トレーニング指標ともなる血中プリン代謝マーカーは、これまでの報告通りトレーニング期で低下を示し、脱トレーニング期間で有意な回復を示した。腸内環境は、腸内細菌及び便中代謝産物の幾つかがトレーニング及び脱トレーニング期間に伴い変動することが確認された。そして、腸内細菌叢及び便中代謝産物においてトレーニング、ディトレーニングに伴う体脂肪率や骨格筋量の変化と関連した腸内細菌が確認されている。レジスタンストレーニングによる身体機能の変化には、腸内環境の可塑性も関連することが示唆された。
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