本年度は、開発したマイクロ負荷試験装置を改良し、静止摩擦力の測定を重点的に行った。本研究の範囲では、雪粒子間のミクロなへき開強度は、雪粒子とガラスの結合力である凝着応力より大きくなったと考えられ、マクロな摩擦特性にはほとんど影響しないと判断した。そのため、雪粒子間のミクロなへき開強度やせん断強度の測定を行わず、凝着応力と静止摩擦力について詳細に調べることにした。ワックスの有無に関連して、表面エネルギーの影響について調べるために、ガラス表面をピラニア洗浄したものと、さらにシラン処理したものの2種類を用意した。さらに、雪ブロックとガラス平板の代わりに、広い雪面とガラス平板の摩擦実験を行い、より多くの雪粒子が接触する場合の静止摩擦特性についても調べた。 以上より、本研究の範囲では、雪面とガラス平板の静止摩擦係数は、粒子径が大きいと小さくなった。表面エネルギーの影響は、粒子径が小さい場合にはほとんど見られないが、粒子径が大きい場合には、表面エネルギーが大きい方が静止摩擦係数がやや大きくなった。最大負荷荷重の影響については、粒子径が大きい場合にはほとんど見られなかったが、粒子径が小さい場合には最大押し込み荷重が小さい1Nのときには他に比べて静止摩擦係数が大きくなった。静止摩擦力を真実接触面積で除して求めた摩擦せん断応力と平均接触圧に凝着応力を加えて求めた有効平均接触圧の間には、実験を行った-5℃においては正の相関が見られた。実験をしていない他の温度については、今後検証が必要である。負荷時間による影響は、ミクロな実験ではほとんど見られなかった。これに対して、マクロな実験では、負荷時間が長いほど静止摩擦係数が大きくなった。マクロな実験は、ミクロなものに比べて平均接触圧が小さく、ミクロな実験でも最大負荷荷重が小さいと負荷時間の影響を受けることを示唆している可能性がある。
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