研究課題
筋過緊張状態の治療やスポーツ選手のコンディショニングでは,擦る,揉む,押す,叩くなどの手技療法やストレッチングなどの「徒手的な施術」が用いられているが,これらの研究領域の計測方法や評価方法がいまだ確立されていない。本研究は,筋血流の評価システムの開発と徒手的な施術によってもたらした局所や全身の筋血流の変化について検討し,科学的根拠をもとに明らかにすることを目的にしている。2023年度までの2年間で、複数の体表部位からの筋血流応答計測を行うための拡散相関分光法(DCS) 2点同時計測システムを完成させ,施術側および反対側の僧帽筋血流の計測を完了した。2023年度は僧帽筋以外の筋に対する手技療法の効果を検討するための予備実験及び本実験を遂行することができた。実験では左右下腿三頭筋を被験筋とし,右下腿三頭筋内側頭部には5分間の手技療法を施し,左下腿三頭筋内側頭部には手技療法を施さない条件として,手技療法前後における左右下腿部の筋血流の変化を計測した。手技療法による全身循環の影響(血圧および心拍数変化)は最小限であったが,手技療法を施した右下腿三頭筋内側頭部の筋血流が増加し,左下腿三頭筋部の筋血流の増加は見られなかった。さらに増加した右下腿三頭筋内側頭部の筋血流は手技療法後から計測終了時の20分間は増加した状態を維持していた。この持続的な血流増加は僧帽筋の手技療法後と同様な変化であった。また,手技療法後の筋血流増加量を比較すると僧帽筋の手技療法側の筋血流は約2倍であったのに対し,下腿三頭筋内側頭部の手技療法側は約1.4倍であった。従って,手技療法は施術部位によらず局所筋血流を増加させる効果をもたらす治療法であると科学的根拠を元に検証できたと考えている。以上の結果と本研究に関する研究成果を論文投稿,学会発表として報告し,未発表部分に関しては今後公表する予定である。
すべて 2024 2023
すべて 雑誌論文 (3件) (うち査読あり 3件、 オープンアクセス 3件) 学会発表 (18件) (うち国際学会 1件、 招待講演 2件)
Advanced Biomedical Engineering
巻: 13 ページ: 66~72
10.14326/abe.13.66
Journal of Applied Physiology
巻: 136 ページ: 1053~1064
10.1152/japplphysiol.00863.2023
Biomedical Optics Express
巻: 14 ページ: 5358~5358
10.1364/BOE.498693