研究実績の概要 |
本研究の目的は、ジャンパー膝の発症前から発症後までの経過における膝蓋腱の画像所見(超音波・MRI)の経時的な変化を明らかにし、予防や早期介入に繋げることである。 2022年度末までに、合計113人のアスリートが研究に参加した。1年以上の経過観察が可能であった83人165膝のうち、11人17膝(10.2%)は初回検診時にジャンパー膝と診断した。残り148膝中、期間中にジャンパー膝を発症した例は10人11膝(7.4%)であった。観察期間中にジャンパー膝を発症した発症群と非発症群に分けて初回検診時の画像所見を比較したところ、発症群はMRIで腱近位が有意に厚かった(US:5.9mm vs 5.1mm ; p=0.10, MRI:6.5mm vs 5.5mm ; p<0.05)。性状変化の陽性率は発症群で低エコー域(27.3% vs 3.6% ; p<0.01)と異常血流(54.5% vs 10.2% ; p<0.01)が有意に高く、MRI高信号変化は有意差がなかった(54.5% vs 28.5% ; p=0.07)。また、ロジスティック回帰分析では、超音波での異常血流が独立したリスク因子(オッズ比8.7 ; p=0.024)であり、回帰式の的中率は91.9%であった。 先行研究でも超音波の異常所見がジャンパー膝の発症予測因子となり得ると報告されているが、異常所見の内容について一定の見解がなかった。本研究では、発症前から膝蓋腱近位の厚さや腱内の低エコー域・異常血流に差がみられたが、中でも異常血流が統計学的に有意なリスク因子として抽出された。 以上より、入学時超音波検査での異常血流はジャンパー膝発症のリスク因子であり、検診によりハイリスク群を同定できる可能性が示唆された。
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