研究課題
本研究は、ジャンパー膝の画像所見の経時的な変化を明らかにし、予防や早期介入に繋げることを目的とし、発症リスクが高い競技種目の大学生アスリートを対象に、定期的な検診と障害発生の追跡調査を実施している。検診では超音波とMRIを使用し、膝蓋腱の厚さと性状変化を評価し、膝蓋腱の痛みの有無を確認している。2023年度末までに、合計140人が研究に参加した。1年以上の経過観察が可能であった102人202膝のうち、16人24膝(11.9%)は初回検診時にジャンパー膝と診断した。残り178膝中、期間中にジャンパー膝を発症した例は10人16膝(9.0%)であった。観察期間中にジャンパー膝を発症した群と非発症群で初回検診時の画像所見を比較すると、発症群で腱近位が有意に厚く、低エコー域と異常血流の陽性率が有意に高く、MRI高信号変化は有意差がなかった。ロジスティック回帰分析では、超音波での異常血流が独立した予測因子(オッズ比7.3 ; p=0.016)であった。また、2023年度の検診ではポータブルエコーを調達し、従来機と併用することでその測定結果の一致度についても検証し、厚さ計測の一致度はICC(2,1) 0.92(p<0.001)、低エコー域・異常血流はそれぞれκ係数0.64(p<0.001)、0.30(p=0.014)であった。昨年度の検証でも、発症前から膝蓋腱近位の各所見に差がみられ、その中で異常血流が統計学的に有意な予測因子として抽出されたが、症例数と観察期間を増やした今年度も同様の結果が得られた。新たに調達したポータブル機を使用しても、従来機との一致度は比較的良好であり、血流の感度などをさらに調整することで、よりフレキシブルな検診に繋げられると考えられた。以上、入学時超音波検査での異常血流はジャンパー膝発症のリスク因子であり、検診によりハイリスク群を同定できる可能性が示唆された。
すべて 2023
すべて 雑誌論文 (1件) (うち査読あり 1件、 オープンアクセス 1件) 学会発表 (3件)
Asia-Pacific Journal of Sports Medicine, Arthroscopy, Rehabilitation and Technology
巻: 33 ページ: 1~5
10.1016/j.asmart.2023.08.005