研究課題/領域番号 |
21K11473
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研究機関 | 工学院大学 |
研究代表者 |
桂 良寛 工学院大学, 教育推進機構(公私立大学の部局等), 准教授 (70622835)
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研究分担者 |
稲見 崇孝 慶應義塾大学, 体育研究所(日吉), 講師 (10750086)
山口 翔大 慶應義塾大学, システムデザイン・マネジメント研究科(日吉), 研究員 (80896093)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | エキセントリック / 高齢者 |
研究実績の概要 |
当該年度は、新型コロナウイルス感染症の影響により、感染予防の観点から定期的な体力測定が実施できなかった。体力測定が実施できたのは2021年4月上旬および11月下旬の2回であったため、それらのデータをもとに、体重を利用したエキセントリックトレーニング(ECC)の効果について解析、考察を行った。 被験者達は2021年1月~3月の緊急事態宣言による施設閉鎖期間中も各自で筋力トレーニングやウォーキング等の運動を実施していたため、2021年4月の体力測定では、各項目の値は各年代の平均値と比較すると若干の低下は見られるものの、大きな低下は見られなかった。その後、週1~2回、1回50分の、椅子座りを中心としたECCを継続することで、約半年後の11月には緊急事態宣言前の値に近い状態(比較的体力が高い状態)まで、各項目の値を改善することができた。具体的には、開眼片足立ち、脚伸展筋力、2分間ステップテスト、30秒椅子立ち上がりテスト、長座位体前屈においては、ECC開始前の値と比べて有意差は無かったが増強傾向が見られた。また移動能力については維持されていた。 力をいれた筋が伸ばされるECCは、筋活動時に必要なエネルギーが少なく、心肺機能への負荷も小さいため、自覚的に楽に感じる特徴がある。今回の調査では、よく推奨されてるスクワット等の筋力トレーニング(自覚的運動強度が高く、心肺機能への負荷も大きい運動)を中心に実施せずとも、体力の維持・向上を獲得できたという点に大きな意義がある。本国では"運動はしんどいから続かない"、"運動する時間がない"などという理由で自発的に運動を行う高齢者はまだまだ少ない。我々が考案したECCは、日常生活で椅子に座るだけの動作を中心とており、自覚的にも楽な体操にもかかわらず効果は非常に高いため、今後の高齢社会で元気高齢者を増やす一助となることが期待できる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
新型コロナウイルス感染症の影響で、研究フィールドである高齢者施設での活動が制限され、3ヶ月毎の体力測定が実施できなかったことが、研究活動に大きな支障・遅れが出た要因である。 当初、体力測定を4回実施する予定だったが、感染予防の観点から測定機器の使用に制限がかかり、2回の実施にとどまった。また、血液検査も同様に実施できなかった。しかしながら、この様な状況下においても、4月と11月の2回の体力測定および週1回のエキセントリックトレーニングを行い、体力データを採取できたことは大きな収穫であった。また、データ解析後は、体重を利用したエキセントリックトレーニングの効果を確認できた。これらの結果から、今後は簡単で楽に実施でき、トレーニング効果も高く、日常生活にも容易に取り入れることができるトレーニングとして世に広めることができる。そして今後、再度自粛期間等の厳しい状況が発生したとしても、元気高齢者を増やすことができると考える。
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今後の研究の推進方策 |
2022年度は、対面での体操指導および体力測定が予定通り実施できることとなった。そのため、本来予定していた3か月ごとの体力測定、血液検査を実施し、その成果をまとめる。 具体的には、まずは4~5月にかけて、研究フィールドである町田市の高齢者施設(桜美林ガーデンヒルズ)と今後の研究スケジュールの打ち合わせ、実施できる測定内容、感染対策方法等について確認を行う。その後6月、9月、12月に体力測定、9月と12月に血液検査を行う予定である。 さらに、桜美林ガーデンヒルズでは、新型コロナウイルスの影響により外出が減り、自宅にこもりがちな人や運動しなくなってしまった人が増加する問題が発生している。この問題に対して、該当者を訪問し、代表的な自重エキセントリックトレーニングである「椅子座り」を普段の生活動作の中で実施してもらい、その効果についても検証することにした。対象者は同意書を取った被験者であるため、こちらについても円滑に実施できる環境が整っている。これから、上記の内容が円滑に実施できるよう、施設側と十分な連携をとりながら進めていきたい。 今年度は研究フィールドの閉鎖および対面でのトレーニング指導の制限により、学会発表や論文等の成果が出せなかった。従って、各規制が緩和される2022年度は成果をしっかりとまとめ、報告していきたいと考えている。
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次年度使用額が生じた理由 |
令和3年度は、新型コロナウイルス感染症の影響により研究フィールドである高齢者施設(東京都町田市 桜美林ガーデンヒルズ)が長期間閉鎖されたため、当初予定していた体力測定および血液検査が実施できなかった。そのため、それらの測定に必要な機器(体力測定システム、遠心分離機、採血キット等)を購入しなかった。 令和4年度はこれらの測定が実施可能となるため、購入予定であった上記の機器を購入し、研究を進める予定である。
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