本研究の目的は,デプスカメラを用いた卓球戦術要素のリアルタイム測定・分析システムの実用化技術を構築することである.研究実施項目は,卓球ボールの運動パラメータ(運動初期の並進速度及び回転方向・回転速度)の推定手法の開発,選手の3次元位置・姿勢の推定手法の開発,3次元軌跡の自動計測手法の開発である. 運動パラメータの推定:まず,デプスカメラを用いて卓球ボールの連続的な3次元位置を計測し,3次元軌跡を生成できることを確認した.次に,卓球ボールの3次元軌跡から運動パラメータを推定する方法論を開発した.運動パラメータの推定値は,計測された3次元軌跡と運動モデルから生成した3次元軌跡の平均二乗誤差を目的関数とし,これを最小化する運動モデルの初期並進速度と初期回転方向・速度とした.探索には粒子群最適化法を用いた.本研究で提案した方法で,運動パラメータを安定して高い精度で推定可能であることを確認した.さらに,CFD解析を用いて上記の運動パラメータの推定に必要となる空力係数を算出した. 選手の3次元位置・姿勢の推定:まず,デプスカメラで撮影した選手同士の卓球ストロークラリー中の動画から,深層学習技術を用いた姿勢推定手法を用いて,2次元の選手位置・姿勢を推定する手法を開発した.次に,画像データと距離データの対応関係を用いて,上記で推定した選手の位置・姿勢に対応する画素の距離データを求め,選手の3次元の位置・姿勢を推定する手法を開発した. 3次元軌跡の自動計測:デプスカメラで撮影した選手ストロークの距離画像データから,物体検出技術を用いて卓球ボールを自動で抽出し,3次元軌跡を計測する手法を開発した. 本研究では,リアルタイム測定・分析システムの開発に至らなかったものの,上記のように,各種実用化技術を構築することができた.
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