研究課題
これまでに実施されてきたストレッチングに関する研究の多くは、ストレッチングの強度を客観的に評価できていない、対象筋群を一括りにし、筋ごとにターゲットを絞ったストレッチングを実施していない、という問題点があった。本研究は、肉離れが好発するハムストリングス(大腿二頭筋、半腱様筋、半膜様筋)を対象として、各筋にターゲットを絞った選択的ストレッチング方法について、ストレッチング強度の客観的な評価に基づいて検討することを目的とした。下肢に整形外科的疾患のない健常な成人男性20名を対象者とした。股関節30度屈曲位、膝関節完全伸展位において、股関節の内-外旋角度(3角度)および内-外転角度(3角度)の異なる9つの姿勢をとらせ、そのときの大腿二頭筋長頭、半腱様筋、半膜様筋の剛性率(shear modulus)を超音波せん断波エラストグラフィにより測定した。本研究では、各筋の剛性率を、ストレッチング強度の客観的な指標として用いた。測定中には表面筋電図の電極を各筋に貼付し、対象者のハムストリングスが活動していないことを確認した。実験の結果、大腿二頭筋長頭、半腱様筋、半膜様筋の剛性率は、いずれも股関節内-外転角度の有意な影響を受けることが示された。また、股関節内-外旋角度が筋の剛性率に与える影響は、大腿の内側に位置する半腱様筋・半膜様筋と大腿の外側に位置する大腿二頭筋長頭では異なることが示された。一般的に、ハムストリングスのストレッチングとして股関節を屈曲させることが多いが、本研究の結果から、股関節の内-外転角度もハムストリングスのストレッチングにおいて考慮すべきであることが示唆された。加えて、股関節の内-外旋角度を調整することで、内側・外側に位置するハムストリングスを選択的に伸ばすことができる可能性が示された。
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