ヒトは出生前から生後1-2年で様々な行動を獲得するが、その背景には基本的な運動機能や感覚情報処理機能の発達が存在する。ここでの発達では単に神経学的 に成熟によるものだけでなく、運動/行動時に生じる多種多様な運動情報および感覚情報の学習、統合などが重要と考えられる。一方で、ヒトや生物が持つ多種多様かつ大量の運動/感覚情報が実際の行動時にどのように利用されているか?利用するためにどのように学習しているか?は明確ではない。本研究では、発達過程に生じる複雑な行動の獲得に必要な報酬や条件を追求するため、感覚-運動情報構造に着目した強化学習モデルを提案する。
本年度は、これまで開発を進めてきたシミュレータと計測の両輪で研究を進めた。 前者に関しては乳児の記憶や運動主体感に関する研究に用いられるモビール課題を想定し、内発的動機づけを用いた強化学習モデルによるシミュレーションを構築した。これまでモビール課題における運動創発や学習を説明するモデルには物理的要素が含まれていなかったが、昨年度までに開発した物理シミュレータを用いることで、モビール-乳児間の物理的相互作用を導入した。その結果、これまでのモデルでは説明されていなかったモビール切断直後の一時的な運動増加を再現することに成功した。 後者に関しては、昨年度まで行っていた乳幼児の運動計測において皮膚モデルを導入したよりリアルなモーションキャプチャを実現した。これにより、様々な運動だけでなく感覚の推定も容易となる。
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