研究課題/領域番号 |
21K11499
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研究機関 | 和歌山大学 |
研究代表者 |
村瀬 浩二 和歌山大学, 教育学部, 教授 (90586041)
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研究分担者 |
安部 久貴 北海道教育大学, 教育学部, 准教授 (40634556)
梅澤 秋久 横浜国立大学, 教育学部, 教授 (90551185)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | 形成的没頭度尺度 / アダプテーション・ゲーム / TDC / 思考力・判断力・表現力 / 評価法 |
研究実績の概要 |
近年、重視される非認知スキルは、没頭する経験によって育まれると考えられる。本研究は、ボールゲームにおいて学習者の思考力・判断力や仲間との相互作用を高めることで、ゲームへの主体的参加を促し、その没頭度を高めることを仮説とした。そこで、まず体育勤勉性尺度(村瀬,2017)をもとに形成的運動没頭度尺度を作成する。また近年の戦術学習のなかで思考力・判断力と仲間との相互作用を両立させようとしたAdaptation Game やTDC (Tactical Decision-making Competency)を用い、思考力・判断力や相互作用と、没頭度の関係を明らかにし、思考力・判断力、相互作用の充実、教師の関わりにより没頭度を高める方策を明らかにする。また、これらのゲームでは学習者はゲーム場面における思考力・判断力の自己評価を行う。この記録は、ゲーム場面における思考力・判断力の評価指標となる可能性を持つことから、思考力・判断力の評価方法の開発を行う。 そこで本研究は、①没頭度を評価するために形成的運動没頭度尺度を作成する。また、TDCやAdaptation Gameの実践における思考・判断や仲間、教師との関わりと形成的運動没頭度の関係を検証から、②思考力・判断力、仲間との相互作用の充実により没頭度や勤勉性を高める方策を明らかにする。また、その実践の検証から、没頭度を高める適切な教材や教師の関わり方のモデルを提示する。さらに、③ゲーム場面における思考力・判断力の評価方法を開発する。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
初年度は、体育における形成的没頭度尺度作成を中心に研究を進めた。形成的没頭度尺度の質問紙は現段階では9問3因子で構成されており、体育授業における毎時間の没頭度を測定しようとする試みである。小学生(3~6年生)と中学生を対象に1回分のアンケート収拾を進め、1000部程度のアンケートが回収された。WEBアンケートと紙ベースのアンケート双方で回収したため、現段階では尺度作成にまでは至っていない。また、これと平行してアダプテーション・ゲームの実践やTDCを用いた実践も進められた。 アダプテーション・ゲームについては小学校2校2クラス、中学校2校3クラス、特別支援学校1クラスにおいて実践した。アダプテーション・ゲームについては形成的没頭度尺度を使用したクラスと使用していないクラスが2クラスあったが、アダプテーションに対する思考を学習カードによって収集していることから、思考力・判断力・表現力に与える影響を明らかにするデータとなる。また、TDCは小学校1クラス、中学校3クラスにおいて実践した。これについても、中学校3クラスでは形成的没頭度質問紙を毎時間収集しながら実践しており、TDCの効果検証に用いることが可能である。また、単元前後に体育勤勉性尺度を測定した1クラスがあり、毎時間と没頭度尺度と合わせて検討することが可能である。これらは、形成的没頭度尺度の妥当性の検証に用いることができよう。 アダプテーション・ゲームやTDCを用いた評価法の確立については2年度目以降の課題となる。
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今後の研究の推進方策 |
今後はまず、回収された質問紙について分析を進め、尺度として完成させる必要がある。ただし、2年度目もアダプテーション・ゲームの実践校があるため、それらが終了した段階で分析を進める予定である。また、アダプテーション・ゲームについては、「共生」を進めるに当たり適した教材であることが認識された。そこで、共生を研究対象とする中学校における実践において、アダプテーションに対する抵抗に対する教師の働きかけを収集することとした。これが、共生を促進する手立てとなり得るであろう。
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次年度使用額が生じた理由 |
この次年度使用額は、北海道教育大学に分配金が使用できず残された分である。コロナ禍において旅費として配分されていたが、使用できずに繰り越したものである。本年度に旅費として使用予定である。
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