研究課題/領域番号 |
21K11500
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研究機関 | 広島大学 |
研究代表者 |
名塩 征史 広島大学, 森戸国際高等教育学院, 講師 (00466426)
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研究分担者 |
森本 郁代 関西学院大学, 法学部, 教授 (40434881)
傳 康晴 千葉大学, 大学院人文科学研究院, 教授 (70291458)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | 武道 / 実践的指導-学習過程 / 相互行為論 / 形/型 / 動作の反復 |
研究実績の概要 |
令和3年度では、研究代表者、分担者がそれぞれ担当する武道データに基づくインタラティブな身体技法の実践的指導-学習過程の解明に取り組み、データ間の共通点や相違点をいくつか明らかにすることができた。共通点としては、特に基本的な動作の繰り返しが多用されていること、また繰り返しの対象としていくつかの身体動作が有意に組み合わされ、ひとまとまりの「形/型」として機能していることが挙げられる。一方、相違点としては、「形/型」がどの程度明確に規定されているか、またそれに応じて一定の動作の繰り返しがどの程度積極的実施されているかに、データ間で差があることが挙げられる。このデータ間の差には、各データにおける参与者の年齢(成人向けか年少者向けか)、稽古の達成志向、各武道の形式性等の影響が見受けられた。 昨今のコロナ禍の影響により、予定されていた新規データの収集への着手は延期せざるを得なかったが、月一回のペースで研究ミーティングを開催し、既存データの再分析に基づく議論を行うことができた。データの分析だけでなく、武道の歴史的背景の確認、「形/型」に関する理論やその一般化に向けた検討も行い、本研究がもたらす知見を広く他の身体教育や伝統芸能の分野へと応用する可能性を見出しつつある。 令和3年度の成果報告は、国内外の学会・研究会での研究発表を通して行われ、その都度、他の研究者や武道実践者から有益な情報や助言を得ることができた。特に国際学会におけるシンポジウムでは、武道だけでなく、研究代表者による三味線を対象とする研究の中で空手との共通点が指摘されるなど、他の芸道を対象とする研究とも共同することで、本研究の視野を広げる貴重な機会となった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
遅れの主な原因は、コロナ禍における感染予防の観点から、データ収集を自粛せざるを得なかったこと、また既存のデータを利用した分析と書き起こし資料の作成についても、当初予定していた通りに補助員を導入した共同作業も難しい状況であったことなどが挙げられる。また、国内外への出張も自粛していたため、他の研究者や実践者との交流にも制限が多く、十分に情報を共有することが困難であった。
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今後の研究の推進方策 |
コロナ禍が終息を迎えた際にはすぐに新規データの収録に取り掛かる予定である。初年度における既存データの見直しを踏まえ、特に重要な場面に絞って効率よく収録を進めることも検討したい。 引き続き自粛を余儀なくされた場合には、「形/型」に関するこれまでの研究成果と、文献調査によって得られた理論との整合性を確認し、加えて本研究独自の視点から「形/型」とその指導-学習における役割を捉え直す議論に注力する。また、柔術の練習場面で観察される臨機応変の指導スタイルと空手や太道の稽古場面で観察される一斉練習を基調とした指導スタイルとの違い、さらに「形/型」について特に厳格な規定を持つ空手の稽古に関しては、集団での指導-学習と独習との違いについても考察していく予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
コロナ禍の影響により、予定されていた国内出張やデータ収集ができず、それに伴う研究補助員の雇用もできなかったため、旅費や人件費に割り当てられた費用のほとんどを次年度へと繰り越す結果となった。次年度では、コロナ禍の終息を待って、データ収集等を開始し、それに係る旅費と人件費に繰り越した助成金を使用する予定である。
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