研究課題/領域番号 |
21K11502
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研究機関 | 東京都立大学 |
研究代表者 |
儀間 裕貴 東京都立大学, 人間健康科学研究科, 准教授 (50708039)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | 低出生体重 / 自発運動 / 可聴化 |
研究実績の概要 |
本研究の目的は,『新生児・乳児期初期における全身性自発運動(General Movements;GMs)を可聴化し,その音声特性を利用した早産・低出生体重児の発達支援手法を開発する』ことであり,早産・低出生体重児を能動的に動いて発達する主体として捉え,自己の身体運動に同期した音声をリアルタイムな聴覚フィードバックとして提供することにより,児の全身的な自発運動を増加・促進することを目指す.令和3年度は,データ計測・解析に必要な備品や資料を取り揃え,研究実施準備に取り組んだ.そして,これまでに取得した生後1~3ヵ月齢児における四肢自発運動の3次元座標データを使用し,これを音響信号に変換(可聴化)することに取り組んだ.しかしながら,後の良好な運動発達を予測するとされる運動の特性と,運動発達の遅れを予測するとされる運動の特性を「音」として明確に表現するには至っておらず,さらなる創意と工夫が必要である.また,令和3年度は最終的に介入の対象としている早産・低出生体重児について,その詳細な姿勢・運動・行動の特性を把握するため,これまでビデオで撮影された運動特性評価のための動画を観察・解析し,後の発達(定型発達,知的能力障害,自閉スペクトラム症)との関連性を検討した.その結果,後に発達障害を呈した早産・低出生体重児の新生児期および乳児期初期(生後2~3ヵ月)における姿勢・運動・行動の特性が明らかとなり,発達支援において促すべき運動の基礎的な知見を得ることができた.この研究成果は,英国のオンライン科学雑誌「Scientific Reports」 に掲載された.(論文名:Infant’s Behaviour Checklist for low birth weight infants and later neurodevelopmental outcome)
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
令和3年度は身体運動可聴化技術によるGMs(General Movements)音の作成を目標としていたが,四肢運動データから算出した速度,運動単位数,躍度,運動の同時性(相関)等の指標を音響パラメタ(音量,音高,音色など)に関連付けるパラメタマッピング可聴化の手法が予想していた以上に難しく時間を要し,運動データの変化を音として表現する作業が十分に達成できていない.令和4年度以降も継続して検討を進め,GMs音の完成と,GMs音の聴覚入力が新生児および乳児の自発運動の特性におよぼす影響の検証を進める.
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今後の研究の推進方策 |
身体運動可聴化技術に詳しい研究協力者へ助言を積極的に仰ぎ,新生児および乳児の自発運動特性を明瞭に反映したGMs(General Movements)音の作成を進める.その後,生後1~3ヵ月齢児を対象に,GMs音の聴覚入力の有無やパラメタ(音量,音高,音色など)調節が自発運動の量や質におよぼす影響を検証することによって,児の自発運動を増加・促進させるGMs促進音を作成する.最終的には,新生児集中治療室(NICU)等に入院する早産・低出生体重児を対象に,作成したGMs促進音を聴覚入力し,自発運動が起こる頻度や質的特性におよぼす影響を検証する.得られた成果は,関連学会や論文等を通じて広く発信する.
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次年度使用額が生じた理由 |
学会発表のため渡航費・参加費として計上していた予算が,学会のオンライン開催となったため不要となった.また,コロナウィルス感染状況拡大のため,予定していたデータ集計・解析が十分に行えず,計上していた解析補助の人件費が使用できなかった.次年度の同様の目的に使用する予定である.
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