研究実績の概要 |
本研究では,早産・低出生体重児を能動的に動いて発達する主体として捉え,自己の身体運動に同期した音声をリアルタイムな聴覚フィードバックとして提供することにより,児の全身的な自発運動を増加・促進することを目指した.令和5年度は,前年度に引き続き,3次元動作解析装置取得した生後1~3ヵ月齢児における四肢自発運動の座標データを使用し,これを音響信号に変換(可聴化)することに取り組み,その成果を学会演題発表にて報告した(乳児における四肢自発運動可聴化の試み.日本赤ちゃん学会第23回学術集会,2023年8月)(General Movements 可聴化の試み.第10回日本小児理学療法学会学術大会,2023年10月).発表演題は「第10回日本小児理学療法学会学術大会優秀賞」を受賞した.また,可聴化音源を介入刺激とした際の運動特性変化を捉えるうえで必要となる運動解析指標について,乳児期初期の自発運動を撮影した動画データを用いて骨格・姿勢推定を行い,身体各部の運動特徴について検討した.その結果,乳児期初期の正中位活動の定量化につながる指標を得ることができた(Correlation between pose estimation features regarding movements towards the midline in early infancy. PLOS ONE, 2023).最終的に,可聴化音源を被験児に刺激として与え,これが自発運動特性に及ぼす影響を具体的に検証するに至らなかったが,計測した運動データを可聴化する技術の開発,後の良好な運動発達を予測するとされる運動特性(Fidgety movements)の音としての表現,実際に音刺激を与えた際に起こる運動特性変化を捉えるための指標の作成を行うことができた.
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