研究課題/領域番号 |
21K11503
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研究機関 | 熊本県立大学 |
研究代表者 |
松本 直幸 熊本県立大学, 環境共生学部, 教授 (00252726)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2026-03-31
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キーワード | 二重課題運動 / 2-back課題 / 認知機能 / 足踏み運動 / しりとり |
研究実績の概要 |
本研究は、どのような運動がどのタイプの認知機能の改善に有効かについて検証することを目的としている。2021年度は、事前に行う運動として二重課題運動に着目して検証した。二重課題運動とは、足踏みなどの単純な動作を繰り返しながら、同時にしりとりや減算を行う運動である。運動だけを行うよりも、事前に積極的に頭も動かしておくことで、事後の認知作業課題の効率改善を期待するものである。今回は二重課題運動として、その場足踏み+2個前しりとりを採用した。2個前しりとりは、自分の前2人が口答した単語に続けて自分の単語を回答するしりとりである。認知作業課題としては、短期記憶やその逐次的な情報更新といった作業記憶能力が要求される2-back課題を採用した。座位安静、足踏みのみ(単一運動)、および二重課題運動の前後(プレとポスト)で2-back課題を実施し、各条件でのプレからポストへの成績変化、およびその条件間での差について検証した。 その結果、正解率の変化は条件間による差が認められなかった。反応時間も、全条件でプレからポストにかけて有意な変化は認められなかったものの、その変化量は安静条件では+17.3 msと延長したが、単一運動では-37.8 ms、二重課題運動では-21.2 msと短縮し、2種の運動条件では安静条件と比べ有意に短縮していた(いずれもp < 0.05)。また、この反応時間の変化量と、二次元気分尺度から求まる覚醒レベルの変化量に相関関係がみられ(r = -0.379 , p < 0.05)、覚醒レベルが上昇するほど反応時間が短縮する可能性が示唆された。ただし、今回、単一運動より二重課題運動で効果が小さかった。その理由として、運動と同時に行う認知作業が干渉して腕振りなどが小さくなり、運動量が低下したことが効果の大きさに影響した可能性が考えられた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
コロナ禍の影響もあり実験協力者のリクルート、および実験日の設定が想定通りに進まなかった。また実験のスループット改善のために購入を考えていた心拍変動装置が、予算額が減額となった影響で購入できなかったことも影響している。
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今後の研究の推進方策 |
2021年度の実験では、二重課題運動の効果が単一運動のそれよりも小さくなり、仮説とは反する結果を得た。単一運動時と二重課題運動時の足踏み運動を比較したところ、二重課題運動では、腕振りの挙上高で21 cm、大腿挙上高で4 cm小さい運動となっていた。これは、足踏み中に2個前しりとりという認知的負荷がかかり、運動への注意が散漫となり指示通りの運動ができなかったものと考えられる。次年度は、被験者の前に鏡を立て、常に運動サイズを被験者にフィードバックすることで運動サイズの統一を図り、二重課題運動の効果について再検証する。さらに、運動の認知作業に対する効果を修飾する食品成分としてカカオフラバノール(CF)に注目し、事前のCF摂取と運動実施の組み合わせが、その後の認知作業課題のパフォーマンスに与える効果について検証を進めていく予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
当初2021年度予算にて心拍変動装置の購入を予定していたが、実際の交付額では購入できなかったことにより繰越金が生じた。また、コロナ禍の影響もあり、実験協力者のリクルートにも苦労し、謝金としての支出が計画を下回ったことも理由の一つである。繰越金は、主に実験協力者への謝金に充てる予定である。
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