研究実績の概要 |
R4年度には,第38回全国小学生陸上競技交流大会の6年100mに出場した選手32名(男子16名,女子16名)を対象とし,男女それぞれの上位入賞者8名(以下,上位群)と予選を通過しなかった者の中から記録の低い順に8名(以下,下位群)を選出し,疾走動作の比較を行なった. その結果,男子のスイング脚の腿上げ角速度および振り戻し角速度は,上位群の方が下位群よりも有意に大きく,腿上げ角速度は,男子全体の疾走速度との間にも有意な正の相関関係が認められた.また,接地時大腿角度と男子全体の疾走速度の相関係数が有意ではなかったが負の傾向となる様子がみられた(r=-0.427, p=0.09)ことから,上位群は下位群よりも回復脚の積極的な回復が行われ,シザース動作が適切に行われていた可能性が示唆された.しかし,支持脚については,上位群と下位群との間に有意差が認められた項目はなく,上位群の児童が必ずしも合理的なキック動作を習得しているわけではなかった.一方,女子は,男子とは異なり,スイング脚においては,上位群と下位群との間に有意差が認められた項目はみられなかった.しかし,支持脚において,接地中の足関節最大屈曲角度,股関節最大伸展角速度,脚全体の最大スイング速度は,上位群の方が下位群よりも有意に大きく,これらの項目と女子全体の疾走速度との間に有意な正の相関関係が認められた.また,女子全体の疾走速度と接地中の足関節伸展量との間に有意な負の相関関係が認められ,足関節最大伸展角速度においては,有意ではなかったが負の傾向となる様子がみられた(r=-0.450, p<0.08).これらのことから,女子の上位群は,下位群よりも合理的なキック動作になっていた可能性が示唆された. 以上のことから,全国大会で上位入賞した児童の疾走動作の特徴は男女で異なることが明らかになった.
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