研究課題/領域番号 |
21K11515
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研究機関 | 八戸工業高等専門学校 |
研究代表者 |
横田 実世 八戸工業高等専門学校, その他部局等, 教授 (70827451)
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研究分担者 |
川端 良介 八戸工業高等専門学校, その他部局等, 准教授 (10734973)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | 熱中症 / 持久走 / 高専生 / 体育 / 温熱数理モデル |
研究実績の概要 |
近年熱中症について重視されている中、主な熱中症予防として暑さ指数(WBGT)値に基づいたガイドラインが使われている。本研究では温熱数理モデル用いて人体に影響する熱ストレスを解析する。本モデルは、非侵襲的に測定できる外的因子(服、環境温度)と内的因子(人体計測・心拍数)を入力することで持久走中の直腸温を簡単に時系列でシミュレートし、それを被験者の身長・体重、生活状況などのアンケート結果や持久走中のビデオ動画分析と照らし合わせて熱中症の傾向および内的要因を解明し、その予防対策を図る。 R3年度はコロナ感染拡大防止のため体育の授業が行えず、夏休みの運動部クラブ活動における持久走(n=17)で学生たちの熱ストレスレベルを計測した。持久走前に参加者学生の安静時の心拍数、体温を測り、同時に前日の睡眠時間、当日走る前の水分摂取量、普段の運動量、朝食の有無などをアンケート調査した。持久走中に測定した心拍数と環境(気温・湿度・風速)を温熱モデルにインプットし直腸温を時系列で推測した。予測した直腸温と心拍数をもとに換算したモランの生理学的ストレス係数(PSI)と暑さ指数で熱ストレスレベルを把握した。結果、PSIは中間から高い値が示されたが、生活習慣との関連は見られなかった。 R4年度は6月から7月に1・ 2年生の学生計53名(男子:45名、女子:8名)が各々のクラスの体育授業で持久走を行った。実験のプロセスは上述の通りである。また今回は持久走直前の学生のモチベーションレベルや持久走直後の気持ち悪さを4段階スケールで答えてもらった。体育授業中の暑さ指数はほぼ安全から警戒区域の間であった。しかし暑さ指数が安全であっても持久走直後のPSIは中間から高い数値が見られた。また男子学生の持久走時間にはPSI, モチベーションレベル、当日の水分摂取量、暑さ指数、運動習慣が統計学的に相関していることがわかった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
2021年度は新型コロナウイルス感染症の影響が大きく、保健体育の授業時間内で持久走(1500m走)を実施しなかったため、一般学生を対象とした持久走中の熱ストレスレベルの測定をおこなうことができなかった。しかし、夏季休業期間中のクラブ活動は継続されていたため、運動部に所属している学生17名を対象として、持久走の前に学生の生活習慣に関するアンケート調査の実施し、持久走中の熱ストレスレベル(PSI)を測定したが生活習慣との統計学的な関連は見られなかった。また同時に実験の反省点(安静時心拍数の測る環境づくり)など次年度以降の研究に改善できるような準備をした。 今年度は体育授業で持久走を行い、4クラス、50名以上のデータを収集することができた。また今回はさらに持久走直前の学生のモチベーションレベルや持久走直後の気持ち悪さを4段階スケールで答えたもらいさらに内的要因の要素を増やした。総括して暑さ指数(WBGT)はほぼ安全から警戒区域とバリエーションがあった。しかし暑さ指数が安全であっても持久走直後のPSIは中間から高い数値と生理学的ストレスレベルが見られた。また解析では男子学生の持久走時間にはPSI, モチベーションレベル、当日の水分摂取量、暑さ指数、運動習慣に相関関係が見られた。
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今後の研究の推進方策 |
2021年度の運動部員は常に運動習慣があるアスリート、実験期間は夏休み中であったため前日の睡眠時間・当日の水分摂取量などを含めて生活習慣の個人差はほとんどみられなかった。一方、平常授業期間の一般学生を対象としたときには、学生の睡眠時間や運動習慣などの生活習慣に個人差が出現する可能性が高いことを踏まえると、 2022年度はサンプル数をあげて保健体育の授業内における持久走中の測定を行うことができた。また、新体力テストの持久走は保健体育の授業の成績に反映されるため、学生の性格や粘り強さなどの特性にも影響すると考え、学生の特性に関するアンケート調査も追加した。 2023年度も継続的に持久走における熱ストレスレベルのデータを収集することでさらに様々な統計分析ができるようにする。また2022年度ではアンケート調査項目を追加したが保健体育の授業内における持久走という限られた条件下に限り、熱ストレスレベルに関連する要因が出現する可能性が考えられる。そのため、アンケート調査項目の再検討を行ったうえで、データの取得、関連要因の検討を進める。
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次年度使用額が生じた理由 |
コロナ感染拡大のため対面学会の参加を取りやめ、その代わりにオンラインによる学会参加とした。また対面学会も近場の仙台の学会での発表であった。
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