近年熱中症について重視されている中、主な熱中症予防として暑さ指数(WBGT)値に基づいたガイドラインが使われている。本校でも熱中症が増えている中、本研究では温熱数理モデル用いて人体に影響する熱ストレスを解析する。本モデルは、非侵襲的に測定できる外的因子(服、環境温度など)と内的因子(人体計測・心拍数)をインプットすることで持久走中の直腸温を簡単に時系列でシミュレートし、それを被験者の身長・体重、生活状況などのアンケート結果や持久走中のビデオ動画分析と照らし合わせて熱中症の傾向および内的要因を解明し、その予防対策を図る。 R5年度は計15名の男子1年生を対象に6月から7月に各々のクラスの体育授業で持久走を行い、昨年度同様持久走のパフォーマンスにおける生理学的反応やアンケート調査による生活習慣などを検証した。持久走の前に参加者学生の安静時の心拍数、体温を測り、同時に前日の睡眠時間、当日走る前の水分摂取量、普段の運動量、朝食の有無などをアンケート調査した。持久走中に測定した心拍数と環境(気温・湿度・風速)を温熱モデルにインプットし直腸温を時系列で推測した。予測した直腸温と心拍数をもとに換算したモランの生理学的ストレス係数(PSI)と暑さ指数で熱ストレスレベルを把握した。持久走中の暑さ指数は安全から警戒区域の間を示し、暑さ指数が安全であっても持久走直後のPSIは中間から高い数値が見られた。R4年度のデータを含めた線形回帰分析(n=61)では完走時間と走行前の水分量摂取やPSIには相関関係がなく、週の運動量とWBGTに大きく関与していた (p<0.05)。その他の内的要因パラメータ(例:BMI、前日の睡眠時間)においては持久走者間の差異は見られなかった。
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