研究課題/領域番号 |
21K11516
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研究機関 | 国立研究開発法人産業技術総合研究所 |
研究代表者 |
吉江 路子 国立研究開発法人産業技術総合研究所, 情報・人間工学領域, 主任研究員 (00722175)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | 感情 / 運動 |
研究実績の概要 |
人前で音楽演奏やスポーツ等のスキル動作を遂行する際に喚起されるパフォーマンス不安(いわゆる「緊張・あがり」)は,多くの人々を悩ませている。中でも,音楽演奏者はパフォーマンス不安に悩む者が多く(Yoshie et al., 2011),音楽公演中のパフォーマンス不安に対する適切な対処法を確立することは重要である。こうした状況を踏まえ,本研究では,対面状況の違いがパフォーマンス不安に与える影響を検討することを目的としている。本年度は,パフォーマンス不安に影響を与える状況的要因が演奏経験・熟練度によってどのように異なるかを検討するため,プロの演奏家を対象とするインタビュー調査データの質的分析を行い,音楽を専攻する学生のデータと比較した。その結果,プロの演奏家においては,公演直前や公演中のごく短い期間にのみパフォーマンス不安に関連する心身の変化が報告された。一方,音楽を専攻する学生は,公演に向けた準備開始時よりパフォーマンス不安に関連する心身の変化が生じ,公演後もそれが持続する傾向が認められた。このことから,演奏経験・熟練度が上がるにつれて,より限られた状況でパフォーマンス不安が喚起されるようになることが示唆された。音楽を専攻する学生に見られるように,長期間にわたってパフォーマンス不安が持続した場合,疲労が演奏の質に悪影響を与える恐れがある。このような演奏者の演奏経験・熟練度によるパフォーマンス不安の差異を踏まえて,対処法を考案していく必要がある。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度は,プロの演奏家を対象とするインタビュー調査データの分析に取り組み,パフォーマンス不安に影響を与える状況的要因が演奏経験・熟練度によってどのように異なるかを検討した。そして,本結果に関する論文の執筆・投稿を行った。以上のように,おおむね順調に成果が得られている。
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今後の研究の推進方策 |
本年度は,プロの演奏家と音楽を専攻する学生の比較により,演奏者の演奏経験・熟練度によるパフォーマンス不安の差異に関する示唆を得ることができた。来年度は,こうしたパフォーマンス不安の個人差に着目しつつ,パフォーマンス不安に影響を与える状況的要因についてさらに検討を進めていきたい。
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次年度使用額が生じた理由 |
本年度は,既存の研究設備等を工夫して利用したため,次年度使用額が生じた。来年度,研究補助に関わる人件費等に使用する予定である。
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