研究実績の概要 |
人前で音楽演奏やスポーツ等のスキル動作を遂行する際に喚起されるパフォーマンス不安(いわゆる「緊張・あがり」)は,音楽演奏者やスポーツ選手を初めとして,多くの人々を悩ませる深刻な問題である。中でも,音楽演奏者はパフォーマンス不安に悩む者が多いことが過去の研究から示されており(Yoshie et al., 2011),音楽公演時のパフォーマンス不安に対する適切な対処法・介入法を確立することは重要だと言える。こうした状況を踏まえ,本研究では,音楽演奏者を対象として,対面状況の特徴がパフォーマンス不安に与える影響に関して検討を進めてきた。研究期間中,対面状況の違いが音楽演奏者の心理面・生理面・行動面の変化に及ぼす影響を調べた先行研究に関して詳細な文献調査を行った。本年度は,その調査結果を,感情心理学研究誌にてレビュー論文として発表した。また,研究期間中,音楽演奏を専攻する学生及びプロの演奏家を対象としたインタビュー調査データの質的分析に取り組み,対面状況の特徴がパフォーマンス不安に与える影響及びその関連要因の検討を行った。その結果,周囲の他者からの評価が意識されやすい状況では,パフォーマンス不安が高まることが明らかになった。また,音楽を専攻する学生に比べて,プロの演奏家のほうが,より限られた状況でパフォーマンス不安が生じることが示され,演奏経験・習熟度がパフォーマンス不安の発生に影響を及ぼすことが示唆された。本年度は,これらの研究結果をまとめ,国際学会での発表を行った他,Frontiers in Psychology誌に論文を発表した。
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