研究課題/領域番号 |
21K11521
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研究機関 | 愛知教育大学 |
研究代表者 |
鈴木 裕子 愛知教育大学, 教育学部, 教授 (40300214)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2025-03-31
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キーワード | 非認知能力 / 幼児期 / からだを動かす遊び / 発達 / 因子構造 / 教育的介入 / 年齢的特徴 |
研究実績の概要 |
幼少期におけるからだを動かす遊びにおける非認知能力の醸成過程に関連する規定因と獲得につながる機序を明らかにし,教育的介入に資する資料を得ることを目的に,これまでに,幼少期におけるからだを動かす遊び経験が,非認知能力の醸成に影響を及ぼすという仮説を検証するための3つの調査を実施した。一連の研究から,非認知能力の「非」が何を表すのかが,学術的,実践的に特定されていないという問題点が浮上した。そこで,幼少期におけるからだを動かす遊び経験を対象として,「非」認知と想定される項目を作成し,3歳,4歳,5歳という年齢的な相違,発達傾向の観点を含めて非認知能力の「非」を具体化することを本研究課題の目的とした。 方法の手順,1)からだを動かす遊び場面における「非」認知能力と想定される項目を収集選定。2)3歳,4歳,5歳において無作為抽出した子どもに対しての,保育者の代理評定という手続きで質問紙調査を実施。対象児:1724名、代理評定を行った保育者:862名。3)最尤法・プロマックス回転に基づく探索的因子分析。4)内的整合性検証のための信頼性係数の算出。 その結果,からだを動かす遊び経験の「非」認知能力の因子構造は,3歳児では4因子23項目,4歳児では5因子41項目,5歳児では7因子38項目が抽出され,「非」認知能力の因子として命名された。幼児期におけるからだを動かす遊び経験における「非」認知能力における因子としての共通する特性概念は,「自己制御・自己コントロール」「自他関係」「目標達成」「レジリエンス」の4つに分類された。各年齢によって,それらの概念が分岐したり収束されたりしながら変容し,年齢によって異なる「非」の因子構造が捉えられた。幼少期におけるからだを動かす遊び経験における「非」認知能力が具体化され,同時に3歳,4歳,5歳における醸成過程に関連する規定要因の一端が捉えられた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
予定していた1年目の研究「研究①からだを動かす遊びにおける非認知能力の因子構造」(令和3~4年度)に関する調査,分析を実施し,幼少期におけるからだを動かす遊び経験における「非」認知能力が具体化され,同時に3歳,4歳,5歳における醸成過程に関連する規定要因の一端が捉えられた。ここで得られた因子構造に基づく項目は,幼少期におけるからだを動かす遊びにおける非認知能力の年齢的な特徴であり,それは,その年齢の終わりまでに育ってほしい姿であり,からだを動かす遊びのなかで見つめたい姿であることが含意された。 この結果は,2022年度に,日本保育学会第75回大会,Pacific Early Childhood Education Research Association 22th Annual Conferenceなどで発表する予定となっており,また学会誌への投稿を準備している。
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今後の研究の推進方策 |
令和4年度から,研究②からだを動かす遊びにおける非認知能力の育ちの道筋 ( 令和4年度~6年度 )の段階に着手する。 目的:からだを動かす遊びにおける非認知能力の「非」の醸成過程を明らかにする。 方法:得られた因子構造を用いた縦断的な観察・調査研究を行う。3歳後半~6歳までの変容を追跡調査し,同時に発達段階における支援方法,保育の質との関連を合わせて検討したい。令和4年度後半からは,特に3歳児を対象にする。異なる環境や教育方法を有する幼稚園・保育園から対象を選出し,3園各30名程度を対象としてインテンシブグループとし,トライアンギュレーション(調査手法の併用)によって収集データの生態学的妥当性と,縦断研究において発生しやすい参加者離脱の問題にも対応しフィジビリティを担保させる。
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次年度使用額が生じた理由 |
残額が生じた理由は以下の2点である。 1)初年度である本年において,PCを新規更新,合わせてSPSSの購入を計画していたが,後継機種の発売が遅れており未購入となった。2022年度に購入予定である。 2)コロナ禍により国際学会がオンライン開催となり,渡航費が不要となった。
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