研究課題/領域番号 |
21K11527
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研究機関 | 流通経済大学 |
研究代表者 |
立川 和美 流通経済大学, 社会学部, 教授 (70418888)
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研究分担者 |
小粥 智浩 流通経済大学, スポーツ健康科学部, 教授 (20358774)
稲垣 裕美 流通経済大学, スポーツ健康科学部, 教授 (20433568)
小峯 力 中央大学, 理工学部, 教授 (60382826)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2025-03-31
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キーワード | ライフセービング / コミュニケーション教育 / ライフセーバー育成 / コロナ禍 |
研究実績の概要 |
2021年度においては、研究実施計画の通り「データ収集・ライフセービング活動の現状把握・問題点等の整理」を中心に研究を進めた。その詳細は、以下のとおりである。 まず、本研究分析データの精緻化を目的とし、パイロット研究を兼ね、ライフセーバーを目指す学生、ライフセーバー育成の指導に当たっている関係者等の多様な対象者の談話データ収集を行った。具体的には、SERC(シュミレーテッド・エマージェンシー・レスポンス競技)のトレーニングにおける談話を、リーダー、チームメイト、要救助者など多様な視点から探ることができるよう、複数の機材を用いて音声・映像のデータを収集した。現在、採集した談話データのコーパス化を行いながら、分析の上で必要な事項の洗い出しなどを行っている。このほか、こうした実際のライフセービング活動やトレーニングに加え、指導者の談話(ライフセービングに対する考え方や指導の際の意識など)、上記SERCの大会に参加したライフセーバーを目指す(現在すでに活動している者を含む)学生たちの救助の場面におけるコミュニケーション意識について、「振り返り」として座談会形式をとった談話等を収集している。こうした作業を通して、分析に効果的なデータ収集方法の決定、ライフセービング活動の現状の把握、問題点の整理を進めている。 またこれらに併せて、2021年度は、国内外における成果発表も行った。具体的には、ECSS(European College of Sport Science)の国際会議において「コロナ禍における日本のライフセービングの状況」に関して、ライフセーバーを目指す学生にフォーカスした報告を行ったほか、『流通経済大学論集』56(4)において上記発表に大幅に加筆修正を行い、主としてコミュニケーション意識に関する論考を発表した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
現在、研究の進捗状況はおおむね順調と考えられる。当初計画していた2021年度の研究内容を着実に進めることができている。 しかし、コロナ禍の状況が予想以上に厳しいことが影響し、学外で予定していたデータ収集については、やや遅れがみられる。ただしこの点については、今後、ワクチン接種率の上昇や治療薬の開発が急ピッチで進められている社会状況に鑑み、ある程度リカバリーが可能であると判断される。 一方で、オンライン形式での国際会議における研究発表など、初年度には予定していなかった海外への研究成果の発信を行うことができ、本研究の目的や方向性などについて有益なコメントを得ている。これは今後の研究内容の深化・拡充に、極めて重要な知見の収集という点で意義ある成果と考えられる。
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今後の研究の推進方策 |
現在、研究は当初の研究計画に沿っておおむね順調に進められており、今後も計画通りに進めていく予定である。 ただし前述の通り、長期化するコロナ禍のため、2021年度に実施が難しかった、学外を中心としたデータ収集(より広い範囲の対象を想定したデータ収集、具体的にはライフセービング指導者に対するより多角的なインタビュー調査、大学生から高校生までを射程としたライフセーバーを目指す生徒・学生のコミュニケーション意識の調査、救助以外のライフセービング活動に関する談話データ収集等)を、2022年度以後は活発に行っていく予定である。特に「コロナ禍」という特殊な社会状況におけるライフセービング活動の実態、さらに「アフターコロナ」を見据えた課題という点も視野に入れ、今後の研究に大きな意義を持つようなデータ収集を目指していく。 さらに2022年度においては、こうしたデータ収集と併せて、より詳細な言語データの分析も進めていく。特に2022年度は研究メンバーの各々の専門性を生かし、まずは個々のデータ分析に注力していく予定である。 こうした結果を、2023年度以降に行う予定であるライフセービングのコミュニケーション教材作成につなげていきたい。
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次年度使用額が生じた理由 |
2021年度においては、データ収集を中心に研究活動を進めたが、収集活動の性格(パイロット的要素を一部帯びた、インタビューや座談会など比較的静的なデータが含まれること等)から、その際に用いた機材はすでに研究者が所持していたものを活用したため、当初それらに計上していた物品費の使用がなかった。しかし、現在、収集したデータの検討を進めており、音声データ収集や非言語活動の映像データ収集において、より高性能の機材が必要であると判断されており、2022年度以降、新たにこれらの購入に対する物品費が発生する予定である。 さらに国際学会の発表に関して、当初、ヨーロッパ方面への発表者2名の渡航を予定していたが、コロナ禍にあり学会開催がオンライン形式となったため、旅費の使用がなかった。しかし、今後、学会開催が通常の対面形式に戻ることが予想され、その場合にはやはり海外の研究者との直接の情報交流は必須となるため、旅費が発生する予定である。またこれは、国内学会に関しても同様である。
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