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2022 年度 実施状況報告書

コーチング学の教育の質保証のための教育課程編成上の参照基準の作成とその実践

研究課題

研究課題/領域番号 21K11531
研究機関日本大学

研究代表者

青山 清英  日本大学, 文理学部, 教授 (20297758)

研究期間 (年度) 2021-04-01 – 2024-03-31
キーワードコーチング学 / 教育の質保証 / 分野別参照基準 / スポーツ学 / 教育学
研究実績の概要

2022年度は2021年度に取り組んだ、日本と欧米のスポーツ指導者プログラムの現状分析の結果をふまえて、体育・スポーツ学、教育学、心理学における「教育の質保証における参照基準」の理論面と実務者養成面からの批判的検討を行うことであった。まず、体育・スポーツ学における参照基準の検討を行ったところ、体育・スポーツ学とコーチング学には学問構造としてどちらも学際応用理論あるいは総合科学的な特徴を持つことが確認された。このような意味において、体育・スポーツ学とコーチング学は入れ子構造の関係になっているといえる。ドイツ語圏やロシア語圏を中心としたヨーロッパにおけるスポーツ科学の構造から考えれば、それは体育・スポーツ学がコーチング学を中核理論として、それに関連諸科学が関与する形式をとるのに対して、コーチング学は、パフォーマンス論、トレーニング論、試合論、マネジメント論を中核理論として、それに関連諸科学が関与するという形式をとる。したがって、体育・スポーツ学の参照基準とコーチング学の参照基準の関係については、この入れ子構造に関する関係性の検討が新たな課題として浮き彫りにされた。
次にコーチング学の「分野の定義・特性」という観点から、教育学におけるそれとの比較検討を行った。まず、教育学を形成する研究領域との比較では、「教育方法学」との親和性が確認された。とりわけ、教育方法学における研究対象としての「教育実践」及び研究方法としての「実践的アプローチ」(行為・活動・制度をより望ましい状態に変化させていくことを検討する)にコーチング学の実践性の重視という特徴が重なってくる。また、教育学全体との関係では、教育学固有の特性として示されている①人間と社会の可変性への関心、②研究アプローチの多様性、③教育学の再帰性、④他の諸科学との協働、といった視点が親和的であった。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

3: やや遅れている

理由

2022年度は体育・スポーツ学、教育学における「教育の質保証における参照基準」の理論面と実務者養成面からの批判的検討を行った。そのなかで学問的特性をふまえたコーチング学と体育・スポーツ学、教育学の比較検討は順調に進んだと言えるが、教育学との比較で言えば、「実務者養成のための内容としての参照基準」の検討については、「教員養成」と「スポーツ指導者養成」の関係性の検討において十分な整理を行えなかった。それは、参照基準における「学の固有性」と「固有の能力」の関係性を科学論的な観点から十分に検討できなかったことに起因する。したがって、能力養成における自然科学と人間科学の意義について考察する必要がある。コーチング学と体育・スポーツ学、教育学の比較検討の内容については、青山清英ほか(2023)コーチング学における教育の質保証に関する学問論的課題、日本コーチング学会第34回大会、2023年2月28日、日本体育大学などを中心に発表を行った。
次にコーチング学と心理学との比較検討についてであるが、今年度は心理学の参照基準を熟読し、その作成意図を整理するにとどまった。特に、検討が必要となる公認心理士や臨床心理士資格取得のための教育内容と方法に関する検討が不十分であった。
以上のことをふまえて次年度の「コーチング学における教育の質保証のための教育課程編成上の参照基準」の作成を試みる。

今後の研究の推進方策

2023年度は本研究課題の最終年度となる。2021年度には日本と欧米のスポーツ指導者養成プログラムの現状分析を行い、2022年度にはコーチング学の「参照基準」作成のための体育・スポーツ学及び教育学における「教育の質保証のための教育課程編成上の参照基準」の分析を行った。これをふまえ、2023年度は2022年度に進められなかった心理学との比較検討を行い、過去2年間の研究成果をふまえ「コーチング学における教育の質保証のための教育課程編成上の参照基準」の作成を試みる。これまでの取組で新たな研究課題が生まれている。それは、前回の申請課題のテーマでもあった「測定スポーツのコーチング学」の体系化にも関わる課題である。現在、日本コーチング学会編『測定スポーツのコーチング学』(仮)の編集責任者として内容の取りまとめを行っているが、測定スポーツはその競技成績を時間と距離の測定結果によって決定するので、量化して把握できる知識内容と親和性が高い。したがって、コーチング学における教育の質保証といったことを考える際には、測定スポーツのコーチング学の学問的特異性をどのうように教育内容に反映するかという問題にが重要となる。つまり、測定スポーツの人間科学的な研究をどのように考慮するかという問題である。最終年度となる2023年度は、予定されていた計画と共に前回申請した研究課題との関連性をふまえて研究を進めていきたい。

次年度使用額が生じた理由

新型コロナウィルス感染症のため、当初支出を予定していた学会出張と調査出張が行えなかったため繰り越しが生じた。次年度では研究成果を発表する学会出張を予定より増やして研究を遂行する予定である。

  • 研究成果

    (8件)

すべて 2023 2022

すべて 雑誌論文 (4件) (うち査読あり 4件、 オープンアクセス 3件) 学会発表 (4件) (うち国際学会 1件)

  • [雑誌論文] 大学との連携によって実施した中学校体育授業に関する事例的研究:投能力向上のための学習プログラムについて2023

    • 著者名/発表者名
      高信清人,松原拓矢,伊佐野龍司,関慶太郎,小針幸世,青山清英
    • 雑誌名

      大学地域連携学研究

      巻: 2 ページ: 23-39

    • 査読あり / オープンアクセス
  • [雑誌論文] Squat and countermovement vertical jump dynamics using knee dominant or hip dominant strategies2023

    • 著者名/発表者名
      Seki K., Nagano T., Aoyama K., and Morioka Y.
    • 雑誌名

      Journal of Human Kinetics

      巻: 86 ページ: 63-71

    • 査読あり / オープンアクセス
  • [雑誌論文] 円盤投におけるサークルの大きさが投動作に与える影響2022

    • 著者名/発表者名
      菊池翔太,関慶太郎,櫛英彦,青山清英
    • 雑誌名

      陸上競技研究

      巻: 129 ページ: 24-33

    • 査読あり
  • [雑誌論文] 測定スポーツの分類に関する一考察2022

    • 著者名/発表者名
      青山清英,青山亜紀
    • 雑誌名

      コーチング学研究

      巻: 36 ページ: 15-17

    • 査読あり / オープンアクセス
  • [学会発表] コーチング学における教育の質保証に関する学問論的課題2023

    • 著者名/発表者名
      青山清英,青山亜紀
    • 学会等名
      日本コーチング学会第34回大会
  • [学会発表] 観察的動作評価法を用いた記録向上に伴う円盤投動作の評価に関する実践報告2023

    • 著者名/発表者名
      菊池翔太,富永翔太,関慶太郎,青山清英
    • 学会等名
      日本コーチング学会第34回大会
  • [学会発表] 大学と学校における体育授業の連携に関する一考察 ―中学生の投能力向上のための授業を対象として―2022

    • 著者名/発表者名
      高信清人,松原拓矢,伊佐野龍司,関慶太郎,小針幸世,青山清英
    • 学会等名
      大学地域連携学会第2回大会
  • [学会発表] Effectiveness of a learning program to improve throwing techniques for junior high school students2022

    • 著者名/発表者名
      Kiyohito Takanobu, Keitaro Seki, Kiyohide Aoyama
    • 学会等名
      22nd International Symposium : Evidence-Based Practices for Elite Sport
    • 国際学会

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公開日: 2023-12-25  

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