今年度は呼吸器感染症である新型コロナウイルス感染症(COVID-19)が定期健康診断(健診)に及ぼす影響を評価するために,パンデミック前(2019年)とパンデミック中(2020~2023年)の状況変化を定性的・説話的に分析した。結果:2020年の健診は第1波の渦中に実施された。健診3日目終了後の4月16日に第1回の緊急事態宣言が全都道府県に拡大したので,健診を中断せざるを得なくなった。そして,香川県の要請により大学は20日間の臨時休業となった。その後,宣言が解除され,健診を再開できたのは6月22日であった。会場面積はパンデミック前の約4.2倍に増加させた。また,時間当たりの受診者数を0.22~0.38倍に減少させた。次に,2021年の健診は第3波が収束し第2回の緊急事態宣言が解除された後に実施した。会場面積はパンデミック前の9.0倍に増加させた。時間当たりの受診者数は0.37倍に減少させた。健診終了後,第4波が拡大し第3回の緊急事態宣言と香川県コロナ非常事態宣言が発出された。続いて2022年の健診は第6波により発出された香川県まん延防止重点措置が解除された後に行われた。会場面積は前年と同じく9.0倍,時間当たり受診者数は0.35倍であった。そして,2023年の健診は第8波が収束し,同年5月よりCOVID-19が5類感染症とされた直前に実施した。会場面積は前年と同じ,時間当たり受診者数は0.31倍であった。考察:COVID-19流行状況や行政による感染症政策に応じて,大学における健康管理を柔軟に変更させることができた。パンデミック下で大規模な健診実施が可能であったのは,会場面積の大幅な拡大と時間当たりの受診者数の減少に加え,徹底した感染予防対策が功を奏したと推察する。また,今後のパンデミックを想定し,健診のより安全な実施方法,感染症教育法を検討すべきであると考える。
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