研究課題
先行研究では、脳広範囲に位置する行動の獲得・実行を担う神経回路が覚運動スキルの学習過程にシフトすることを報告している。この神経回路シフトのメカニズムを解明するためには、脳広域から学習依存性の神経活動変化を計測する技術が必要となる。しかしながら、小動物の脳広範囲から神経活動を計測する既存の技術の多くは時空間解像度が低く、より広範囲から高い時空間解像度で計測可能な新技術の開発が求められていた。本研究では、前述の問題を解決するために小動物用の新たな皮質脳波計の開発に取り組んできた。昨年度は、最大32チャンネルの記録電極を具備した薄膜型脳波デバイスの試作品を用いて、マウスに実装する手技を確立した。今年度は、記録電極数を最大64チャンネルに増設した新規デバイスを完成させ、皮質脳波が計測可能か実証実験を行った。薄膜型皮質脳波デバイスはマウスの大脳皮質の上部(体性感覚野)に設置した。計測実験では、頭部を固定した覚醒状態のマウスの前面に設置したチューブとLEDから、低流量の空気による髭への体性感覚刺激とLED点滅による光刺激をランダムに呈示した。実験中の皮質脳波は薄膜型デバイスにより記録した。その結果、本実験では体性感覚刺激による感覚誘発電位が検出される一方で、視覚刺激に対する電位変化が検出されないことを確認した。これにより、我々が開発したデバイスにおいて特定の感覚刺激に応じた皮質脳波が記録・検出可能であることを確認した。
2: おおむね順調に進展している
2年目は最大64記録電極を搭載した薄膜型皮質脳波記録デバイスを新たに開発し、覚醒状態のマウスの体性感覚野から感覚誘発電位の計測を行った。本研究は当初予定していた通り、順調に進展している。
本年度は開発中の小動物用薄膜型皮質脳波計の記録電極を拡張し、機能評価を実施した。今後は、この新規デバイスを大脳皮質の複数の感覚領域上に設置し、同一個体の動物から異なる感覚刺激に応じた誘発電位を記録可能か検証する。
令和4年は、代表者の大学異動に伴って研究計画に若干の遅れが生じ、次年度使用額が生じた。この費用は、令和5年度の実験動物の維持費、消耗品購入等の費用に充てる。
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Optics Express
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BMC Research Notes
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