研究課題
スキル学習に関連する脳神経回路は、学習中に特定の回路から別の回路に遷移することが報告されている。この脳広域で生じる神経回路変化のメカニズムを明らかにするためには、学習に依存した神経活動の変化を広範囲にわたって計測する技術が必要となる。しかし、小動物の脳広域から神経活動を計測する既存の技術は、時空間解像度が低いために、より高い解像度で計測できる新しい技術が求められてきた。そこで本研究では、マウスの脳広域に適用可能な新しい皮質脳波計の開発に取り組んできた。昨年度は、記録電極を拡張した薄膜型皮質脳波記録デバイスの機能評価によって、大脳皮質の登頂部から体性感覚刺激により誘発された電位変化を計測可能なことを実証した。本年度は、デバイスを大脳皮質の頭頂部から側頭部に設置して、覚醒下の動物から体性感覚刺激と匂い刺激により誘導された電位変化を記録する実験を行った。その結果、体性感覚刺激に関連する応答は脳頭頂部に位置する電極から記録され、匂い刺激に関連する応答は脳側方の下部に位置する電極により記録された。更に、皮質脳波記録デバイスの設置位置を小動物CTおよび組織化学的手法により調べた。その結果、神経活動変化を記録した電極の位置と、体性感覚情報と匂い情報の処理に関わる脳領域の位置が一致していることを明らかにした。本研究では、マウスの大脳皮質の広範囲から皮質脳波を計測可能な新たな技術を開発した。今後は、この技術を用いることで、スキル学習中に脳広範囲で生じる神経回路レベルの変化を追跡することが期待される。
2: おおむね順調に進展している
3年目は最大64記録電極を搭載した薄膜型皮質脳波記録デバイスにより、覚醒下のマウスから異なる感覚刺激に関連した電位応答を計測することに成功した。本研究は当初予定していた通り、順調に進展している。
本年度は、新規デバイスを用いて複数の感覚刺激を同一個体の動物から記録可能なことを実証した。今後は当技術を応用してスキル学習のメカニズム解明を目指す予定である。
実験が順調に進展し、当初予定していたより少ない動物使用数にて本年度の目標が達成された。来年度の動物購入費に充てる。
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Molecular Brain
巻: 16 ページ: 1-13
10.1186/s13041-023-01019-9