研究課題/領域番号 |
21K11562
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研究機関 | 和光大学 |
研究代表者 |
大橋 さつき 和光大学, 現代人間学部, 教授 (60313392)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | 発達障がい児 / 創造的身体表現遊び / 舞台創作 / 向社会的行動 / ムーブメント教育・療法 |
研究実績の概要 |
本研究の目的は、研究代表者らが実施する「創造的身体表現遊び」による舞台創作活動が、発達障がい児の向社会的行動を促進するとの仮説のもと、その効果について明らかにすることである。本研究は、活動に継続的に取り組んできた放課後等デイサービスの実践を対象に、3年計画で構想されている。 初年度である2021年度は、まず、【研究①】として、発達障がい児の向社会的行動や調査尺度に関する先行研究調査を行った。発達障がい児の向社会的行動の困難さに関する研究において取り上げられている要因としては、共感性や役割取得、感情理解、相互交渉などの能力が指摘されているが、このような発達障がい児が最も苦手とする個人内要因による力を高めることによって、向社会的行動を促進するという方法には限界がある。先行研究の検討から、向社会的行動の生起過程や発達に関する知見を取り入れながら、他者の存在や場を関係論的にとらえた上で、どのような環境が発達障がい児の向社会性を育むのかという視点に立った研究が求められるとの知見を得た。また、追加研究として、障がい児者の舞台創作活動に関する先行研究調査、関係者へのインタビュー調査を実施した。 その上で、【研究②】として、対象となる放課後等デイサービスの活動において、 3年半の継続参加が実現していた発達障がい児の記録を対象に、向社会性の変容を確認し、対象児らがとった向社会的行動の特徴と場面を明らかにした。対象児の記録の分析から、向社会的行動として評価された場面の内容を抽出し分類した結果、「行動的援助」、「心理的援助」、「緊急的援助」、「協力的行動」、「非表出的行動」の5つのカテゴリーが表出された。さらに、先行研究と照らし合わせ、「創造的身体表現遊び」による舞台創作活動が発達障がい児の向社会的行動促進に影響を与える要因として、「身体的同期の豊富さ」と「所属感の向上」の2点を考察した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
初年度に計画されていた【研究①】、【研究②】は順調に進み、研究成果として、「『創造的身体表現遊び』を活かした舞台創作における発達障がい児の向社会的行動」と題した学会発表を行った。 今後は、モデルプログラムの考案から具体的な実践を通した研究活動に取り組む予定であるが、その実現に向けては、新型コロナウイルスの感染による影響が懸念される。ただし、対象となる放課後等デイサービスとの研究協力体制も確かなものになっており、感染対策や規模の縮小案等についても検討も重ねながら準備を進めており、2年度以降の実践研究に向けて、予定どおり研究目的を達成できると考えられる。
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今後の研究の推進方策 |
2年目となる2022年度は、1年目に実施した【研究①】と【研究②】をもとに、【研究③】として、発達障がい児の向社会的行動の促進をねらったモデルプログラムを考案し、舞台創作活動を実践する計画である。ただし、新型コロナウイルスの感染状況に応じて、協力機関と検討の上、回数や規模については随時検討を加え実施する。 あわせて、【研究④】として、スタッフ、保護者に加え対象児の教育にかかわる学校担任等の関係者に対して、対象児の向社会的行動に関するアンケート及びインタビュー調査を実施する。【研究④】で得た家庭や教育現場の具体的なニーズと照らし合わせながら、【研究③】で考案するプログラムについて観察による記録をもとに、その可能性や課題について検討を重ね、必要な改良を加えながら進めていく。 これらをもとに、最終年度となる2023年度には、【研究⑤】として研究成果をまとめ総括としての考察につなげていく予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
2021年度、参加を予定していた学会が新型コラナウイルスの感染拡大の影響を受け、オンライン開催となったため、旅費の支出がなくなったため、次年度使用額が生じた。主に、2022年度のプログラム実践における専門遊具用の設備品費及び関連図書、記録のための消耗品費にあてる計画である。
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