研究課題/領域番号 |
21K11565
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研究機関 | 神戸親和女子大学 |
研究代表者 |
杉山 真人 神戸親和女子大学, 発達教育学部, 教授 (00442400)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | 幼児 / 2者間のタイミング / 聴覚刺激 / 捕捉行為 |
研究実績の概要 |
本研究課題は2者間のタイミング調節課題を用いて幼児の「協調する力」の評価を試みるものである. その前に,まずはボールの捕球課題を行ったところ,ボールと幼児との距離を発達段階に応じて適切に設定していく必要性が示唆された. これを踏まえ,2者間のタイミング調節課題についての実験を行う予定であったが,新型コロナウィルス感染拡大の影響により,連携している保育園での実験が困難となった.他方,本研究課題は成人との比較を行う必要があるため,他の施設にて成人を対象とした実験を行った.この実験はターゲットがヒトとなった場合の捕捉行為の特徴を明らかにすることが目的であった.課題はターゲット(ペアの被験者)の移動に合わせてスタート地点から到達地点へ移動し,ターゲットの到達と自身の移動完了をできるだけ一致させることであった.被験者から見てターゲットが右から左に4m移動し到達地点で停止した.ターゲット-到達地点-被験者のスタート地点の成す角は90°であった.到達地点と被験者のスタート地点との距離も4mであった.独立変数として聴覚刺激条件が設けられた.この条件では,ターゲットはワイヤレスイヤホンを装着し,80bpm,100bpm,120bpmの聴覚刺激と無音のいずれかを試技毎にランダムに提示された.ターゲットは聴覚刺激のテンポで歩行を行うことを求められた.無音の場合はテンポの制約は求められなかった.試技数は各聴覚刺激を3回(無音含む),合計12試技であった.このテンポは被験者には知らされなかった.統制条件ではターゲットへの聴覚刺激の提示はなく,自らのテンポで歩行を行うことを求められた(無音課題を3試技).聴覚刺激条件の無音課題と統制条件の結果を比較したところ,タイミングの正確性,移動距離においては有意な差は見出されなかった.以上の知見は,幼児が同様の課題を行った場合の比較の基準とすることができる.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
新型コロナウィルス感染拡大の影響により,予定していた保育園での実験が困難となったため.他方,緊急事態宣言解除時期等に研究実績の概要で記した実験を行った.これらの実験は視線計測等を行う実験の基盤となる情報を得ることができたという点で意義深いものであった.しかし,本研究課題の主要な試みである,2者間における視線やその他の変数を含めた協応パターンの分析を本格的に行うまでには至らなかった.ただし,今後の実験のための機器の整備,実験計画,実験のシミュレーション等は万全に行うことができている.
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今後の研究の推進方策 |
まずは計画している実験計画を着実に実行に移すことを最優先とする.具体的には,実験の時期を2期に分け,まず①研究1年目に実施できなかった実験を実施し,その後②研究2年目(2022年度)に予定している実験を実施する. ①は成人被験者で行った今年度の実験を幼児に対して実施する.その上で,成人被験者との比較を行う. ②は①の課題を発展させた課題である.課題の内容は①と同様であるが,新たにペア(被験者及びターゲット)に視線計測装置を装着する.なお,ターゲットに提示される聴覚刺激のテンポ及びペアの組み合わせは①及び予備実験を踏まえて決定する.視線,頭部の変位,移動の軌道等を導出し,聴覚刺激条件における無音課題と統制条件の比較を行う.また,テンポの違いによる2者間の歩行パターンの特徴等について分析する予定である. 研究成果の公開については,可能な限り関連学会での発表を行うことを計画している.
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次年度使用額が生じた理由 |
実験実施のため視線計測装置を購入したが,その際他の研究費との合算により購入することが可能となったため.他方で,翌年度分としての使用計画としては次の通りである.本視線計測装置は現状ではモーションキャプチャシステムと同期させることができない.このため,同期させ精緻な分析を行うための追加の装置の購入費に充てる予定である.費用としても当該助成金と同程度の金額であるため,当初の研究費の使用計画に支障はない.
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