研究課題/領域番号 |
21K11578
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研究機関 | 医療創生大学 |
研究代表者 |
丹治 貴博 医療創生大学, 薬学部, 准教授 (60453320)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2025-03-31
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キーワード | プロバイオティクス / 枯草菌 / 納豆菌 / 線虫 |
研究実績の概要 |
加齢に伴う異常タンパク質の蓄積は、パーキンソン病やアルツハイマー病に代表される神経変性疾患を引き起こす。本研究では線虫をモデル生物として、異常タンパク質蓄積を低減するプロバイオティクスの探索を進め、前年度までに、異常タンパク質蓄積の指標の1つである線虫腸細胞の複屈折性が、実験室で餌として用いている大腸菌(OP50株)を枯草菌(ATCC6051株)や枯草菌の一種である納豆菌に変更することで消失することを明らかにした。2023年度は以下を明らかにした。 ① 枯草菌・納豆菌が短寿命の線虫変異体に対しても複屈折性抑制効果を示すか解析した。インスリンシグナル伝達系を亢進した変異体(daf-18(ok480))や酸化ストレスに高い感受性を示す変異体(mev-1(kn1))に対しても、同様の抑制効果が認められた。 ② 複数種類の細菌を混合給餌する実験を行う際に、混合後に細菌が増殖することで細菌の混合比が変動することを抑制するために、栄養欠乏寒天培地上で線虫に細菌を給餌する系を確立した。この系では、OP50株給餌でも複屈折性が消失したため、OP50株よりも強い複屈折性をもたらす大腸菌(HT115(DE3)株)を用いて、混合給餌を行なった。その結果、HT115(DE3)株に対してOP50は等量混合しないと複屈折性を完全に抑制できないのに対して、枯草菌は1/8量で完全に抑制することから、枯草菌が強い複屈折性抑制効果を持つことが明らかとなった。 ③ 枯草菌の複屈折性抑制効果が用いた株に特異的なのか、それとも枯草菌全般の性質なのかを調べるために、種々の枯草菌株を用いて解析した結果、解析したすべての枯草菌株に抑制効果があり、納豆の粘り物質でもあるポリガンマグルタミン酸産生能や寒天培地上での運動性を失った枯草菌株においても抑制効果が認められた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初計画していた研究は、概ね遂行できた。 研究課題とは別の研究の過程で、in vitro 転写によって作製した二本鎖RNAを用いて、線虫の標的遺伝子の発現を効果的にノッックダウンする実験系を確立した。ユビキチン-プロテアソーム系のタンパク質分解に関わるp97の線虫ホモログ遺伝子をノックダウンすると、複屈折性が顕著に増加する。確立した実験系を用いることで、p97遺伝子のノックダウンによる病的な複屈折性に対する枯草菌の効果も調べることができる。そこで、研究期間を1年間延長して解析を続けることとした。
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今後の研究の推進方策 |
① p97遺伝子をノックダウンした線虫で認められる複屈折性の異常増強に対して、枯草菌給餌が抑制効果を示すか解析する。 ② 別テーマの研究で、アンジオテンシン変換酵素1阻害薬であるカプトプリルが、線虫腸細胞の複屈折性や、パーキンソン病の病因タンパク質であるαシヌクレインを筋肉で発現させた遺伝子導入線虫でのαシヌクレインの蓄積・凝集を抑制することが明らかとなったことから、カプトプリルと枯草菌の相乗効果についても解析する。
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次年度使用額が生じた理由 |
2022年度に微分干渉顕微鏡に蛍光観察するための蛍光ユニットを取り付ける際に、水銀ランプ、ランプハウス、バーナーを購入せずに実体顕微鏡と共用にすることで費用を削減した。当初予定していた2023年度の海外での国際学会への参加を都合により取りやめ、国内学会でのみ発表を行った。未使用額は、延長年度である2024年度の実験および学会発表、論文投稿とその準備に使用する。
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