研究実績の概要 |
日本人の血漿リポタンパク質濃度の長期経時的変化について、公開データベースを利用して解析した。データベースとして利用したのは、1989-2019年の国民健康栄養調査結果の血漿脂質データ(TC、TG、HDL-C)と食品摂取記録、民間臨床検査施設SRLに蓄積された検査データ、国連食糧農業機構の国別食品消費データベースを利用した。血漿脂質データから、Sampson らが編み出した計算式により、nonHDL-C, VLDL-C, lbLDL-C、sdLDL-C を計算による求めた。HDL-C以外の血漿リポタンパク質は、脂質管理薬剤服用のない群でも僅かながら減少傾向にあるが、HDL-Cでは対象期間約30年を通じて持続的かつ顕著な上昇が見られる。その程度は男性より女性に著しく、また40から50代の女性に最も著しかった(約20 %)。一方、食生活においては魚介類の肉類に対する摂取の比率の変動が著しく認められた。この比率は1945年から1970までに大きく減少しその後70-80年代を通じで一定であったが、1990年前後から再び著しい減少に転じた。性別年齢別群で比較すると、HDL-Cの上昇と魚介類対肉類の摂取比率の減少との間で強い相関が示された。これはオメガ3脂肪酸摂取がHDL-C増加に繋がるとする過去の解析成績と矛盾する知見となった。
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